はじめに
米雇用回復を妨げている要因
先進国の中ではワクチン接種が進んでいる米国において、雇用回復ペースが鈍い要因として、米金融当局者たちはいくつか挙げています。
(1)米失業保険給付の追加支給延長(9月6日まで)によるもの。
安い賃金(時給)で雇用につくよりも、失業保険を受給してる方が高い収入になるので、敢えて就業しない人がいる、というものです。
(2)学校が完全再開(面談授業)していないために、子供を持つ(母)親が就業できない
(3)一部の州で接種が進んでいない(何らかの理由で接種を拒む米国人が多い)
比較的米共和党支持者が優勢(赤の州)と言われる州での接種率が伸び悩んでいるようです。
上記の内、(3)に関しては、日本人の筆者には何とも言えませんが、(1)と(2)に関しては、9~10月の米雇用回復ペースアップにつながる可能性が高いと思われます(米国の新学期は10月から)。米金融当局者の発言を見ていても、9~10月ぐらいからの米雇用回復を期待している向きが多いようです。
逆に言えば、現状の労働市場のひっ迫は解消されると予想しており、5月、6月、7月の米雇用統計で一喜一憂するなら勝手にしなさい的なスタンスとも思われます。まあ、A.I.はその一喜一憂を生業としているので、それはそれで大事なことなのでしょうが…
内容的にはまちまちな米5月雇用統計
では、米5月の雇用統計について、細かく見てきましょう。
昨年暮れから年明けにかけて、米雇用回復ペースがかなり鈍化していましたが、3ヶ月平均を見ると、順調にペースが上がってきていると見ていいと思います。ご参考までブラード米セントルイス連銀総裁の沈着冷静な発言を引用しますが、「非農業部門雇用者数の増加幅が月100万人ペースになるとは見込んでおらず、むしろ50万人に近い数字となるのではないか」とのことです。とすると、今回のNFPは決して弱くないと思われます。
失業率は昨年3月以来の6%割れの水準となる5.8%で、市場予想の5.9%よりも改善する結果となりました。平均時給の予想以上の上昇率(個人的には予想がどうなんだろうという感じもしますが…)も決してネガティブな材料ではありません。
市場の反応で弱いという印象を受ける方も多いでしょうが、今回の米5月雇用統計は決して弱い内容ではないと思っています。回復途上の過渡期と考えればいいのではないでしょうか。