はじめに
日経平均はしばらくの間、28,000円から29,000円の間で足踏み状態です。4月から5月にかけて発表された日本企業の決算は決して悪いものではありませんでしたし、日経平均の予想PERは14倍台と平時の割安水準まで低下しています。
新型コロナウイルス問題も一進一退といったところでしょうか。東京や大阪は緊急事態宣言の効果もあってか感染者数は減少傾向に転じています。一方で沖縄県は過去最多クラスの感染者数となっています。
明るいニュースはワクチン接種のペースが加速してきていることでしょう。首相官邸の発表によれば6月7日のワクチン接種数は前日比109万3,504回増と、菅総理が目標として掲げた1日100万回接種に到達しました。
もちろんこれは1日の結果ではありますが、足元の1日の平均接種ペースは50万から60万回まで増加しています。1日50万回接種できれば、1ヶ月で1,500万回に達します。非常に勇気づけられるデータです。
こうしたなか、日経平均は横ばいながらマーケットをよくよく観察すると、筆者には明らかな変化が起きているように見受けられます。それは上昇する銘柄の変化です。
日本株が“コロナ後”モードに入ったとみる理由
昨年コロナショックで株価が暴落した後、日経平均は大きく上昇して3万円に到達しました。上昇の立役者は東京エレクトロン(8035)のような半導体関連銘柄やソニー(6758)のようなゲーム・エンターテインメント関連、IT関連などいわゆる「withコロナ銘柄」でした。在宅勤務の増加など生活習慣の変化が業績の追い風になるとの期待から買われて株価が上昇し実際にそういった銘柄の業績は大きく伸びました。
一方、足元で上昇している銘柄の傾向は大きく変わっています。以下のグラフは前述の東京エレクトロンとソニーと、コロナで大きな痛手を受けた業種の代表である、日本航空(9201)や西武ホールディングス(9024)、そして日経平均について4月末の株価を100とした株価リターンを比較しています。
一目瞭然、東京エレクトロンやソニー、日経平均の株価が冴えない一方で日本航空や西武ホールディングスの株価が大きく上昇しています。
これは市場が「アフターコロナモード」に入ったと筆者は理解しています。まだ全く実感はありませんが、足元のペースで順調にワクチン接種が進めば数ヶ月以内に感染状況が大きく好転する可能性は非常に高いでしょう。それは先んじて接種を進めた諸外国の状況から考えれば容易に想像がつきます。
私たちは1年以上コロナと戦い我慢を強いられてきました。筆者は早く旅行に行きたいですし、同僚や友人と安心してお酒を飲みたいです。決して油断は禁物ですが、ワクチン接種率が高まればそういった以前の「普通」が戻ってきます。
「普通」が戻れば、旅行、飲食、買い物など、コロナ禍ではなかなかできなかったアクティビティにお金を使う人が増えるでしょう。それは1年以上我慢してきた分、大きなものになる可能性があります。
そういった動きを先取りする形で関連銘柄が上昇を始めているのだと思います。