はじめに
開催国の株価が堅調だった理由
ではなぜ、これまでの夏季五輪期間では、開催国の株価が堅調に推移してきたのでしょうか。これには2つの面が挙げられます。
第1が“経済効果の面”です。通常の夏季五輪では海外から旅行者の受け入れがあります。直接的な観戦だけでなく、国内の様々な観光需要も盛り上がります。こうした消費拡大が景気や株価にプラスとなってきたと考えられます。
第2が“行動経済学の面”です。行動経済学を平たく言うと、人間の行動はその時の気分に左右されるため、株式を買ったりする投資も気分の影響を受けてしまうということです。
以前、この連載で「ワールドカップと株価の“ベタな関係”は実在するのか」を取り上げました。詳しくは、その記事を読んでもらいたいのですが、「サッカーのワールドカップで日本代表が勝利すると日本株が上がる」ということを紹介しています。
実は、サッカーに限らず大きな国際試合で勝利した国の株価は高いという関係が見られるという研究があります。これは行動経済学という学問が裏づけています。日本代表が勝利すると投資家の気分も明るくなりやすく、株式市場で悲観的な見方が後退するため株高につながりやすいのです。五輪は“地の利”から開催国が歴史的に好成績を収める傾向があります。これが開催国の堅調な株価の背景にあると見ています。
ところで、過去の夏季五輪期間中に開催国の株価が堅調であったことは確認できましたが、開催前、とくに開催までの1か月間の株価はどうだったのでしょうか。騰落率を平均してみると、1.9%のマイナスという厳しい結果となりました。過去の五輪でも直前になると開催が成功できるか不安が高まるケースも少なくなく、それが直前の株価が弱含む背景の1つと見ています。
今後も東京五輪に関しては様々な議論が続くと予想されます。開催された場合も、第1の経済効果の面への期待は難しいでしょう。とはいえ、日本代表の活躍と共に第2の行動経済学の面からの期待はできるかもしれません。