はじめに
2017年に仮想通貨(暗号資産)のビットコインが急上昇したことで「億り人」といわれる言葉が使われるようになりました。その後、一転して仮想通貨は大きな値下がりもしました。今回はビットコインの売却益と扶養についてお悩みの主婦Aさんの事例を紹介します。
仮想通貨で利益が出たら税金はどうなる?
Aさんは現在52歳、夫の扶養内でパート勤務をしています。今回の相談は、2017年の夏にママ友に誘われて購入した仮想通貨ビットコインの売却についてです。
当時、ビットコインの価格は1ビットコイン約47万円。絶対に上がるからと聞いていた通り、購入後にあれよあれよという間に上昇していきました。2017年12月に200万円を超えたというニュースが報道され、その頃「億り人」という言葉も耳にするようになりました。
しかし、 2018年になると仮想通貨NEMの流出事件などネガティブな報道が続き、ビットコインは下がり続けていきました。Aさんは、夫に内緒で自分のへそくりで買ってしまったこともあり、半ば諦めの境地だったそうです。元々投資をした経験がないAさんは、友達の誘いに軽率にのってしまったことを後悔し、いつ売ればいいのか決断できずにズルズルと放置していました。しかし、状況が一変したのが今年2021年になってからです。
Aさんはビットコイン上がっているというニュースをたまたま耳にし、数年振りに価格を見て驚きました。1ビットコインが買値の10倍以上になっていたのです(2021年6月中旬で約430万円)。売却・送付・出金にかかる手数料は各取扱業者によって異なりますが、その手数料を差し引いても、今売却すれば約380万円の利益が出ていることがわかりました。
とはいえ、現在Aさんは夫の扶養に入っています。ビットコインの売却益にはどのような税金がかかるのか、また、売却した後も夫の扶養でいつづけることができるのかという不安を払拭したいと相談にやってきました。
ビットコインの売却益にかかる税金
では、まずはビットコインを売却することで利益が出た時の税金について解説します。
わかりやすく外貨預金を例に考えてみましょう。外貨預金にかかる税金は「利息にかかる税金」と「為替差益に対する税金」の2つがあります。「利息にかかる税金」は利息に対して20.315%(国税15.315%、地方税5%)、日本円での預金と同じく源泉徴収されます。
一方で、「為替差益に対する税金」ですが、具体的には1ドル100円で1,000ドル預金したお金が、引き出す時に1ドル120円になっていたら、1000ドルは円換算で10万円から12万円になるので2万円の為替差益が出ます。
この為替差益は、雑所得として総合課税の対象となり確定申告が必要となります。ただし、年収2,000万円以下の給与所得者で給与以外の所得が20万円以下など、一定の条件に当てはまる場合に確定申告は不要です。
Aさんのビットコインの値上り益は、外貨預金の「為替差益に対する税金」と同じく雑所得として総合課税の対象となります。Aさんはパート先から給与を受け取っていますが、ビットコインを売却して20万円以上の利益が出た時には確定申告が必要となります。
Aさんの年収はパートで約120万円、パート収入だけなら所得税率は5%です。仮にビットコインを売却して約380万円の利益を得ると所得税率は20% に上がり、所得税額は約37万円になります。(基礎控除のみを適用する場合)