はじめに
同じ業種でも戦略はバラバラ
企業の分析をしようとなると、ついつい貸借対照表や損益計算書といった財務諸表を見ようとしてしまいますが、まずは決算説明会資料を読み込んだ方がいいと思います。たとえば、決算説明会資料では売上高が細かく事業セグメントごとに分解されて解説されています。会社によっては損益計算書にも事業セグメントごとの売上高は記載されていますが、決算説明会資料の方が見やすいのでオススメです。
売上高を事業セグメントごとに見ることは非常に重要で、その理由を実感しやすいのがドラッグストア業界です。たとえば、上場しているドラッグストア業界で時価総額上位5位となると、ウエルシア、ツルハ、コスモス薬品、マツキヨ、スギ薬局とお馴染みの名前が並びます。これらはドラッグストア企業ですから、医薬品や調剤で売上をたてていると思うかもしれませんが、どの企業も売上高の2~3割程度でしかありません。実は、日用雑貨、食品、化粧品など他のセグメントで稼いでいます。
ドラッグストア企業の場合、どの企業も医薬品・調剤、日用雑貨、食品、化粧品という事業セグメントは同じですが、この比率はバラバラです。構成比率が投資をする際のシナリオに沿うかどうかが重要となります。たとえばコロナ禍においては、外食産業が軒並み時短営業に追い込まれる一方で、自炊や総菜への需要が高まりました。その間は当然、食品の扱いが多いドラッグストア企業の方が優位になります。
今後、コロナが収束して再び観光客が海外から来るとなると、今度は化粧品を多く扱うドラッグストア企業が優勢になるかもしれない。このようなかたちで、自分の考える投資シナリオと親和性の高い事業構成比を持つ企業を探していくのです。
業界情報の勉強にもなる
個別企業の事業や業績を知る以外にも、業界情報の勉強にもなります。たとえば、カゴメは決算資料の一環として自社製品が属する市場について商品ごとの市場規模を開示してくれています。野菜飲料の市場規模は2020年時点で1,563億円であり、2017年をピークに毎年その市場規模は小さくなっていることも分かります。
また、家電企業のエディオンの資料を見てみると、家電と一言で言っても様々な商品があり、それぞれの販売状況が解説されています。たとえば、コロナ禍による巣篭もり・テレワーク需要でゲームや玩具、空調機器、パソコン関連商品が好調な一方で、前期の買い替えサイクルによる需要の反動で冷蔵庫は売れなかったことや、windows7の買替需要の反動で不調だったことなどが分かります。
クラウドワークスの資料を見てみると、2020年6月以降も週1日程度以上の在宅勤務を行っている企業が75%を超えるというグラフや、副業希望者が2020年時点で半数近くまで上昇していることなどが発表されていることから、今後も在宅勤務に関わる産業の市場規模は成長していくなどのシナリオも立てやすくなります。
財務諸表が重要なのは間違いないのですが、投資未経験者や初心者にとっては非常に馴染みにくい書類でもあります。急に財務諸表を分析するのではなく、まずは決算説明会資料を読むことでざっくりとその企業や、その企業が属する業界について学ぶことから始めてもいいかもしれません。