はじめに

FOMC議事要旨の読み方

FOMC議事要旨のニュースでは、「ほとんどの参加者が今年中に購入額の減額を始めることが適当と判断した」と報道されましたが、それは誤訳です。正確には「経済がFRBメンバーの見通し通りに幅広く進展すれば」という条件がついており、もしその通りに事態が進むなら、年内のテーパリング開始が適当だと「判断する」と「ほとんどの参加者が述べた」のです。

つまり、まだ「判断していない」のです。この点は重要です。実際、27日のジャクソンホール会議を対面からオンライン形式に直前に切り替えたのは新型コロナウイルス感染再拡大による景気へ懸念の表れで、「パウエルFRB議長はテーパリングへの言及を見送る可能性がある」という声も聞かれます。

テーパリング開始のタイミングは流動的で、まだコンセンサスはできていません。つまり「テーパリング年内開始」は可能性だけが示されたもので、あたかも「決定事項」のように捉えたことが間違いだったのです。

FOMC議事要旨発表を受けた債券市場は冷静でした。金利は1日を終えてみるとほぼ横ばいで、こちらは予想したほどタカ派ではない内容だと解釈したようです。つまり特段追加的な材料を提供するものではなかった、と。

すると大きく下げた株式市場の反応だけが間違っていたのでしょうか。S&P500は先週月曜日に史上最高値を更新していました。おそらく利益確定売りのきっかけにされただけで、米国株の投資家はテーパリング早期開始を心底恐れて売りを出したわけではないでしょう。

結局、米国株の下げを見て動揺して売られた日本株が割を食ったということです。それだけ日本株相場はプリミティブだということですが、悲観する必要はありません。ミスプライスが多いということは、それだけ儲かるチャンスが多いということですから。

<文:チーフ・ストラテジスト 広木隆>

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