はじめに
世界で必要なクリーンエネルギー投資資金
2つ目の主要議題は、経済発展によって、今後もしばらく排出量が増える途上国に対する、先進国による資金支援です。先進国による2020年までの年1,000億㌦の目標は未達のままです。今後の速やかな達成を求め、大幅に増やす必要性に言及されました。
2050年のネットゼロ達成には発展途上国支援のスキームが非常に重要となる。IEAによると、2050年までに世界のエネルギー部門がネットゼロを達成する為には、クリーンな電力や消費サイドの効率改善、低排出燃料等へのクリーンエネルギー投資を現在(2016~2020 年)の不十分な水準(年間9,700 億㌦)から2026~2030 年に約4 倍(年間3 兆9,420 億㌦)に増やす必要があるとしています。
現時点の目標は達成されるものの産業革命前から1.5℃を超えてしまうシナリオでも、約1.7倍増やす必要があります。資金調達コストが高い途上国への投資額が大きいため、公的金融期間を呼び水とし、低コストな民間資金の調達方法を強化する必要があるでしょう。
「石炭火力を段階的に削減」で合意
COP26 の最大の焦点だった石炭火力発電の利用については、当初の文書案の「段階的な廃止」から「段階的な削減」へと表現が弱められました。議長国の英国は、石炭火力の段階的な「廃止」にこだわりましたが、インドなどが最終日に反対しました。
日本では電力の約3割を石炭火力に頼っています。10月22日発表の「エネルギー基本計画」によれば、今後、古くて効率の悪い発電所を減らしていくものの、2030年度も全廃せず、電力の2割弱を石炭火力で賄う計画です。
2022年はドイツで先進7ヵ国首脳会議(G7サミット)の開催を控えており、将来の廃止の方向性が提起される可能性は高いでしょう。G7の一員である日本に対しては、途上国のインド等に比べると、石炭火力廃止に対する圧力は強くなると考えられます。