はじめに
地球1個分の暮らしを実現するためには?
それでは、持続可能な消費と生産を実現するために、SDGsのゴール12ではどのようなターゲットを掲げているのでしょうか。
11のターゲットでは、(12.2)天然資源管理、(12.3)食品ロス、(12.4、5)廃棄物や化学物質の管理と削減、等が掲げられています。加えて、企業に対しては(12.6)持続可能性に関する情報を定期報告書に盛り込むこと、各国に対しては(12.7)持続可能な公共調達の慣行を促進、そして、個人には(12.8)自然と調和したライフスタイルに関する情報と意識を持つ、ことを求めています。
特に、(12.3)食品ロスは、「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たり食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる。」と明確な数値目標を持っている重要なターゲットであり、ゴール2「飢餓をゼロに」ともつながっています。
世界では、年間13億トン、人の消費向けに生産された食料の約3分の1が廃棄されています。食料は生産から消費に至るフードサプライチェーン全体を通して廃棄されていますが、新興国では、サプライチェーンの川上、収穫技術や厳しい気候条件での貯蔵等に課題がある一方、先進国は、消費段階において、まだ食用可能なものが廃棄される傾向があります。
前者に関しては、日本が強みを持つスマート農業(情報通信技術を農業に活用)が有効です。農機の自動走行や、センサーやカメラ、クラウドなどを用いた温度、水位、生育データの取得による農業の可視化等を行います。井関農機(6310)やクボタ(6326)のほか、薬剤散布等に用いる農業用ヘリやドローンを手掛けるヤマハ発動機(7272)や本業で培ったセンシング技術を用いた農場を運営するオムロン(6645)などが海外でも実証実験を行っています。
消費段階では、過度な鮮度志向の改善や買い過ぎ防止など、先進国の消費者の意識改革が欠かせません。加えて、企業側も流通時や小売店での在庫管理の効率化が不可欠です。注目される技術が米IBMのブロックチェーン(改ざんが困難な形で取引履歴の記録が可能)を用いたサプライチェーンの管理システムです。米ウォルマートが葉物野菜の取引先にこのシステムへのデータ入力を要請する等、約300社が参加しています。