はじめに
企業のESG情報開示は基準の統一が進む
投資家にとって重要なターゲットは、(12.6)のSDGsやESG情報の開示です。これまで、開示基準が乱立していましたが、11月、第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)において、国際会計基準の策定を担うIFRS財団が、気候変動リスクの統一基準策定を行う新組織の設立を発表しました。
新基準は、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に基づき、2022年6月をめどに策定されます。TCFDは、金融安定理事会(主要国の金融当局で構成され、国際的な金融システムの安定を目指す)によって設立され、企業の気候関連の情報開示を推進している機関です。
TCFD設立や今回の開示基準の統一の背景にあるのは、脱炭素の潮流が企業に様々なリスクと機会をもたらし、企業財務にも影響を与えること、さらに、資本市場がリスクを正しく認識できていなければ、金融市場の安定性を損なう可能性があるとの懸念です。TCFDは、これまで開示を推奨する11項目を掲げるも、対応は各企業に委ねてきましたが、今後は開示の基準が統一されることになるでしょう。
一方で、気候変動は新たな事業機会の創出にもつながります。TCFDが開示を推奨しているシナリオ分析(気温の上昇に応じて、複数の戦略を提示)には各社の戦略が示されていますので、ESG投資を行う際には確認してみましょう。
SDGsやESG情報は、黎明期といえますが、今後、財務情報と同等の水準まで、投資家にとっての重要性や情報開示の実効性等が高まっていくことが期待されます。
<文:投資情報部 ストラテジスト 金森睦美>