はじめに
インフレ沈静化でタカ派トーンの後退も
今回の結果は一つの結果として受け止めつつも、実際の政策はその時々の状況に応じて決まることはいうまでもありません。そういう意味では、米国の金融政策が、今後さらにタカ派化していくよりも、ハト派化する可能性の方が大きいように思われます。
足元で金融政策がタカ派に傾いている最大の要因はインフレの高止まりにあると考えられますが、それはエネルギー価格の上昇が一因になっていると見られます。一時80ドルを超えていたWTI原油価格は、足元では70ドル前後で推移しています。
原油の供給過剰が鮮明になると見られる2022年前半以降、WTI原油は60ドル台で安定的に推移している可能性もあります。それによって物価上昇圧力が緩和すれば、利上げ前倒しのトーンは弱まる可能性もあるのではないでしょうか。
しばらくは長期金利と株価上昇が両立する?
金融政策のタカ派化と同じくらい不安な材料は、景気そのものに対する弱気な見方です。それを如実に物語っているのが、年限の異なる米国債の利回り格差(イールド・スプレッド)です。
足元ではオミクロンによる景気の先行き懸念で10年債の利回りが抑え込まれる一方、金融引き締め観測による2年債利回りの上昇で、イールド・スプレッドは、2021年の年初来の最低水準まで下降した状態にあります。
この利回りスプレッドに、ナスダック総合指数を重ね合わせると、興味深い構図が得られます。局面によって、両者に比例的な関係(正の相関)が認められる場面と、反比例的な関係(負の相関)が認められる場面があるのです。
それぞれの場面を分ける条件が、利回りスプレッドで1.1%(110ベーシス)ポイント辺りの水準にあります。現在のように、これを下回る局面では、両者の間には比例的な関係が強まるように見えます。
10年債と2年債の利回りが逆転し、いわゆる“逆イールド”の状態になると、一般的に景気後退が意識されるわけですが、イールド・スプレッドが110ベーシスを下回るあたりから、市場は景気動向に対して、より神経質な状況となり、株価とは正の相関を示すことになると解釈されます。
足元、年初来最低の水準まで縮小したイールド・スプレッドが、再び一定レベルまで浮揚するためには、10年債の利回りが上昇するか、2年債の利回りが低下するかのいずれかです。
少なくとも、オミクロンの脅威を克服し、10年債利回りが上昇に転じれば、株価にはプラスに働く可能性があります。その際の金利上昇は「良い」金利上昇ということになるでしょう。現時点では、このままズルズルとイールド・スプレッドが低下していくイメージはありません。