はじめに

他社はどうしている?

このような楽天の動きに対して、同業他社はどうしているのでしょうか。楽天証券のライバルの1つと考えられるSBI証券は、投資信託に応じて付与するポイント制度(投信マイレージサービス)に、2022年2月から若干の付与率引き下げがありましたが、継続するようです。

投信マイレージサービスの付与率は、SBI証券が指定した銘柄別に変わります。また、1,000万円未満と1,000万円以上でも付与率が異なります。

算出方法は「(月間平均保有金額×付与率)÷365日×ポイント付与対象月の実日数」の各ファンド合計ということで若干複雑ですが、300万円分の通常銘柄を持っていれば、年間で3,000ポイント以上が付与される計算です。

また、特定のアクティブファンドのポイント付与率を上げた「SBIプレミアムチョイス」や、他の証券口座から投資信託をSBI証券に移管する際にかかる手数料を負担する「投信お引越しプログラム」などを発表しています。

今後どうすれば良い?他社に乗り換えるべき?

ポイントの溜まりやすさを理由に楽天銀行や楽天証券を使っていた人からすると、この変更は非常にショックが大きいでしょう。SNSでは「他の証券会社への移管を検討する」という投稿もみられましたが、保有銘柄の移管にはデメリットもあります。第一に、移管手続きには手間がかかります。

仮に楽天証券に預けている投資信託を移管する場合、

・楽天証券に移管手続きを書類で申請する
・移管する投資信託ごとに3,300円の手数料がかかる
・移管先となる証券会社に投資信託入庫申込書を記載し、楽天証券から手数料の領収書を入手して合わせて提出する

という流れになり、かなり面倒です。

また、楽天経済圏のSPUや楽天カードで投資信託を買う場合にポイントがつくなど、まだまだメリットがあります。楽天カードで投資信託を購入すれば5万円分までは1%のポイントがつく仕組みは維持されており、楽天SPU自体はまだまだポイントが溜まりやすい状態です。

投資信託の購入をクレジットカードで行えばポイントが付与されるサービスは、SBI証券も三井住友カード(NL)と連携して実施しています。しかし、クレジットカードの年会費がかかるゴールド以上でないと付与率は0.5%となり、楽天証券と楽天カードの1%のほうが魅力的です。三井住友カード(NL)ゴールドであれば、1%の付与率になりますが、年会費が5,500円かかってしまいます。年会費は初年度無料で、年間100万円以上のカード利用があれば翌年も無料になりますが、この100万円のカウントから投資信託の購入費用は対象外です。

仮にSBI証券への乗り換えを検討したとしても、楽天経済圏の住人であれば、楽天カードでの支払いが多くなると思います。100万円以上のカード利用を三井住友カードでもするかどうかを考える必要があります。楽天経済圏のポイント制度変更が続いていても、今までが大盤振る舞いだったと考えれば、楽天全体のポイント還元の仕組みはまだまだ大きいと言えるでしょう。

もちろん、投資信託の移管手続きの工数を考えても「投資信託の保有額の多い人」は他証券に乗り換えても良さそうです。ただし、提供サービスが変更されるのは世の常です。さらに、NISAやつみたてNISAをしている人は、年に1度だけしか運用口座を他社の口座に移管できません。慎重に状況を見極めて、判断した方が良いでしょう。

冒頭で触れた楽天銀行の預金金利変更についても、300万円以下の預金しかなければ特に今までと変わりはありません。また、生活防衛費(生活費の6ヶ月分)を現金で確保すれば、300万円以上の預金は投資に回すというのも考え方の一つです。例えば、あおぞら銀行のBANKなど、金利0.2%の普通預金(税引き後0.159%、2022年1月16日時点)と高く設定されているものもあります。複数の金融機関の金利を調べて、広い視点で考えると良いのではないでしょうか。

楽天銀行と楽天証券の制度変更は、それまでの恩恵が大きかっただけにインパクトがありました。ただ、ショックだからといって、まだ残っている楽天経済圏の恩恵を拒否する必要はありません。幅広く他のサービスと比較・併用しながら、それぞれの有利なポイントを押さえていくことが賢い使い方と言えるでしょう。

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