はじめに

【事例2】養子縁組することで相続関係が複雑に 〜独身者との養子縁組〜

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南川敏夫さん(仮名、70歳)とトモ子さん(仮名、70歳)夫婦は、10年前にお互い再婚同士で結婚しました。敏夫さんには子どもはおらず、トモ子さんの連れ子の邦男さん(仮名、40歳)が一人いました。敏夫さんはトモ子さんと籍を入れると同時に邦男さんとも養子縁組を行いました。邦男さんは現在独身で、実家近くで一人暮らしをしています。

邦男さんは、自身の終活の相談について専門家に相談しに行った際、相続で問題が起こりうることを知らされました。

敏夫さんとトモ子さんはお互いが亡くなった時には配偶者と邦男さんが相続人となり財産を引き継げることになっています。ところが両親よりも先に邦男さんが亡くなったときに起こることを両親は考えていなかったのです。

邦男さんが先に亡くなったらどうなる?

邦男さんは敏夫さんの養子になりました。これは「普通養子縁組」といって、邦男さんからすると実の親(トモ子さんとトモ子さんの前夫)と養親(敏夫さん)のどちらの相続人にもなるということなのです。逆にいうと、現在未婚の邦男さんが亡くなった時の相続人は、実の親(トモ子さんとトモ子さんの前夫)と敏夫さんです。トモ子さんの前夫がそのとき生きていれば3人で遺産分割協議を行うことになるのです。

敏夫さんからするとトモ子さんの前夫と遺産分割協議をするなんて思ってもみなかったことでしょう。今後、邦男さんが結婚して子どもを授かるまたは養子縁組をする可能性はありますので、家族関係の状況の変化には注意が必要です。

養子縁組の前にはデメリットも必ず確認を

上記2つの事例はどちらも年齢の順番に亡くなっていくことを想定して行った養子縁組です。しかし、人の寿命は年齢の順ではないこともあります。そのため、養子縁組で相続対策をしても効果がない場合があるのです。

養子縁組はほかの相続人への影響も出てきますので安易に行わず、相続の専門家に相談してください。また、良い面ばかりに目を向けず、起こりうるリスクもしっかり理解したうえでいろんな場面を想定して行うようにしてください。さらに、養子縁組とともに遺言書の作成を行うなど状況に応じて複数の対策をされることも、ご相談の中の選択肢としてお考えください。

行政書士:藤井利江子

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