はじめに

2023年度の企業業績見通しでは、インフレと為替に注意

最後に、このような状況を踏まえた個別株投資のポイントについて見ていきましょう。今後、2023年度の企業業績予想が続々と出てきます。今回はインフレと為替の観点から、分析の糸口について考えてみます。

まずはインフレについて、ウクライナ情勢により資源価格や穀物価格の急騰が起こりました。2月後半から急騰したWTI原油は一時100ドルを下回る場面があるも、FOMC後に切り返し、再度100ドルを超える水準まで上昇しています。

戦争を巡る供給面での懸念や、景気見通しに伴う需要面での変化など、需給の両面の予測が細かく変化しているため、引き続き振れ幅の大きい展開が予想されます。

個別株投資の観点では、この原油を始め、穀物、貴金属などが直近で高騰していることから、例えば3月期決算の企業で言えば、第4四半期(1〜3月)の決算、並びに2023年通期の見通しに影響が出てくると言えるでしょう。すでに市場での物色が進んでいる資源系の企業は予想を上回る好業績、並びに強気な通期見通しとなるかもしれません。

一方で食品など最終財を提供する企業は、値上げが徐々に進んでいるとはいえ、原材料価格の転嫁が十分には進んでおらず、先行きの見通しも不透明感が強まる可能性もあります。

昨年の同じ時期は前年の新型コロナによる業績低下からの回復期ということで、通期業績予想に注目が集まりましたが、今回も外部環境の変化のタイミングということで、投資チャンスにつながるかもしれません。

また金融政策の変化による為替レートの変化も挙げられます。ユーロ/円、ポンド/円は昨年度末から大きな変化はあまりありませんが、ドル/円は昨年3月の110円近辺の水準から121円台まで上昇しています。前年比という観点でいうと、輸出企業には追い風で、輸入物価の高騰でコスト増となる可能性が挙げられます。


金融政策の変更は、国家間の政策金利差の変化を生み、為替にも直接影響を及ぼします。特に日銀が金融緩和を続ける中、他国が今後も利上げ等金融引き締めを加速させる場合、更なる円安が続くことが予想されます。特に外需関連の銘柄を検討する場合は、このあと為替レートがどう変化していくかを念頭に置いて企業分析を行うと良いでしょう。

マクロ経済環境の変化という大きな転換点であるため、“コロナ相場”からは頭を切り替えて相場と向き合うとよいのではないでしょうか。

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