はじめに

経済成長で得る恩恵とは?

繰り返しますが、経済成長はGDPがベースになっています。GDPが増えるということは、実際には消費が増えるか、投資が増えるか、あるいは輸出が増えているということになります。

GDPが増えていくことによって、例えば一般のサラリーパーソンにはどういう恩恵があるのか。GDPは国内総生産と呼ばれていますが、生産額というものは最終的に国民が得る所得にほぼ等しくなります。要するにGDPが増えるということは、マクロとしての所得が増えることになるのです。

GDPが増える、つまり経済のパイが大きくなるということは、それだけみんなが豊かになる、所得が増える基礎になるわけです。しかしながら、万人等しくその受益があるとは、勿論限りません。私の給料が増える……ここはまた違う世界になります。

ただ所得が増えるということは、政府はそれだけ税収が増えます。税収が増えるから、政府はそれによって予算を組んで、軍備を増強したり、研究投資したり、インフラを整備したりということになります。

このように経済が成長すれば税収が増える。税収が増えれば政府がそれを再投資する。それでまた経済、国民が豊かになる。これがベストの好循環です。財政もバランスします。財政がバランスすることは非常にいいことですが、日本ではいつの間にか「財政がバランスすればすべてよし」という発想になってしまっています。その弊害については後述します。

経済成長と国力の関係

日本のドル換算した名目のGDPは1995年が5.5兆ドル程度でした。それがいまでは5.05兆ドルくらいですから、25年かけておおよそ4000億ドルも減っていることになります。要するに国力がそれだけ衰退しているということです。

中国は1995年のGDPが1兆ドルにも満たなかったのですが、いまや17兆ドルです。国力が約17倍に上がっているということです。経済成長にはそれだけの国を変える力があるということです。

例えば、北海道の原野も東京の都心のマンションもそうですが、中国人がその気になったらバンバン買えるわけです。それだけ国力が上がっている。反対に日本はそれだけ安くなっているのです。国力の衰退というのは、じつは「安く」なることです。

これは完全に安全保障の問題です。恐らく中国共産党の幹部にしてみれば「なんだ、日本ってこんなちっぽけなもんか」という感じでしょう。25年前の世界の経済地図を考えてみましょう。GDPで国のサイズを決めた場合、日本は中国を飲み込まんばかりに大きかった。一時はアメリカと拮抗するくらい大きかった―アメリカのGDPの7割にまでなりましたーー日本ですが、いまやほんとうに風前の灯火です。これはまさに国家の危機と言っていいと思います。

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