はじめに

個別の小売企業の決算内容

ここからは、増収増益を達成した企業のうち注目したい企業をいくつか個別に見ていきましょう。

まずは靴小売国内最大手のABCマート(2670)です。4月13日に発表した本決算で、12-2月期の売上高は前年同期比5.9%増の633億円、営業増益は63.6%増の76億円とV字回復を達成しています。

さらに今期(2023年2月期)の通期売上高を前期比11.4%増の2717億円、営業利益を前期比16.6%増の320億円と堅調な内容の予想を発表しました。特に売上高についてはコロナ禍前の2020年2月期に達成した過去最高売上である2723億円に匹敵する数字で、最高売上を更新する可能性も十分にあると言えそうです。会社の発表によればレジャーやアウトドアでも使える商品がヒットしていることなどが業績回復の理由のようです。

続いてファッション小売チェーンのアダストリア(2685)です。企業名は聞いたことがない方も、「グローバルワーク」「ローリーズファーム」「niko and...」などのファッションブランドはお聞きになったことがある方は多いのではないでしょうか。緊急事態宣言が出た際など一時は店舗休業なども行われた中、ファッション各社はコロナ禍で非常に厳しい業績となった会社が多く、同社も同様に四半期赤字に追い込まれた時期もありました。

ところがこの12-2月期は売上高が前年同期比7.5%増の548億円、営業利益が前年同期の3.4億円の赤字から20.8億円の黒字に転換しました。さらに今期(2023年2月期)の通期売上高は14.1%増の2300億円、営業利益は52.3%の100億円とそれぞれ堅調な予想となっています。ABCマートと同様に今期の予想売上高は過去最高水準となっています。

これらの2社のようにコロナ禍で非常に苦しんだファッション・アパレル企業の中にはようやく業績が上向きとなり、過去最高業績更新をうかがうような企業も出てきました。

一方で業績が不調な企業にはどういったところがあるのでしょうか。今年の12-2月期と前年の12-2月期を比べて減収となった企業は14/51社(27.4%)、営業減益となった企業は13/51社(25.4%)、減収かつ営業減益となった企業は4社/51社(7.8%)でした。残念ながら減収かつ営業減益となったのは、ホームセンター運営のアレンザホールディングス(3546)とコーナン商事(7516)、スーパーマーケットのエコス(7520)、総合ディスカウントストアのMrMaxHD(8203)の4社でした。

4社に共通しているのは、コロナ禍が結果的に追い風となった業態だということです。移動の自粛などが求められる中、在宅勤務などの「お家時間」が増加したことによりホームセンターを運営する企業の多くは業績が大きく伸びました。また、営業時間の短縮などもあり、外食する機会が減る中でスーパーマーケットの売上も大きく伸びました。


これまで見てきたように、「コロナ禍で業績が苦しかった企業の回復が本格化し、業績が好調だった企業が反動に苦しむ」という構図が鮮明になってきています。投資で成果を出すには常に「未来に起きること」を予測することが重要です。今後業績が更に良くなる業態、企業はどんなところなのかーーぜひ未来のことを考えて投資成果につなげていただければと思います。

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