はじめに

市場再編に伴う、2つの投資チャンス

今後はどのような動きがあるのでしょうか。個別銘柄投資のポイントとして、2つに分けて見ていきたいと思います。

まずはTOPIXの見直しです。TOPIX指数は新市場が始まった後も、以前の東証1部の銘柄が採用されていますが、2022年10月末から始まる移行期間にて、四半期ごと10段階に分かれて構成比率が逓減していき、2025年1月末に対応が完了される想定です。逓減の対象となるのは流通時価総額が100億円未満の銘柄となっています。

現状でこの対象となるのは約500銘柄あり、移行期間に入るまでに100億円を超えられるかに注目が集まります。またこの対応は四半期ごとに計10回実施されるため、市場再編前に東証1部であった銘柄が時価総額100億円を超えているかどうか、というのは今後も注視される水準の一つとなるでしょう。特にイベント投資を好む投資家の方は、この観点で銘柄選びをしても面白いかもしれません。

日本取引所グループ「株価指数の見直し」より引用

加えて、新市場区分のうちで、上場維持基準に満たず、適合計画を出している企業にも投資チャンスがありそうです。該当の企業は、プライム、スタンダード、グロースでそれぞれ、295社、209社、45社あります。まず、これらの会社は適合計画内に未達部分に対する対応策を記載しているため、企業分析をする情報として参考になるでしょう。そのうえで、あくまで適合計画は目標であり、目標に沿って達成できるかは企業次第です。決算情報と適合計画を照らし合わせ、基準に到達する可能性が高い企業を見つけてみるのは一つの有効な策となるかもしれません。

今後の動向の観点では、適合計画を出すという前例ができたことは、中長期的な施策を企業が開示することは大きな一歩と言えるでしょう。開示された適合計画を見ると、例えば流通時価総額を向上するための計画が示されており、それぞれの企業が企業価値の向上に向けて真剣に取り組む姿勢が見られます。同時に、基準に満たない場合は開示が求められ、投資家の厳しい目にさらされるということも事実です。

この点を考慮し、今後上場を考える企業もより中長期的な目線で戦略を練ってくる可能性も考えられます。まだ制度変更の初期でありますが、日本の株式市場に変化が訪れるきっかけの可能性もあるため、投資ヒントを探る意味で、市場再編に関するニュースは今後も注目するとよいでしょう。

そこまで注目度が上がっていない市場再編ではありますが、制度の変更は投資チャンスにもつながります。多くの人が気づいていないことは、裏を返せばチャンスとも捉えられるので、早いうちから戦略を立てみてはいかがでしょうか。

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