はじめに
日米の金融政策の差異が日米の金利差を生む
為替市場では需要と供給の関係で価格が決まり、需給関係が変動することで相場が変動します。通貨間の交換比率が需給で変わるためです。米国の長期金利が急上昇している一方、日本は低金利の継続が見込まれるので、日米金利差が拡大し、為替市場ではより高い運用益が期待できる金利の高いドルを買う動きが強まっているのが円安進行の大きな要因です。
また、これまで大幅なマイナスで推移していた米国の実質金利が上昇してきており、2022年3月下旬に2年ぶりに米国の実質金利が日本の実質金利上回ったことも円安の要因と考えられます。実質金利は、預金金利や債券の表面利率などの名目金利から予想インフレ率を引いたもので、プラスの状態だとインフレが起きない=金融政策の引き締めが加速すると捉えられるからです。
貿易赤字も円安の要因
ウクライナ情勢を背景に、ロシアの生産シェアが高い天然ガスなどのエネルギー価格は高騰、アルミニウムや農作物など幅広い分野の商品の価格が上昇しています。特にエネルギーを輸入に頼る日本にとってはエネルギー価格の高騰は厳しいものがあり、輸入額が膨らんだことから、財務省が20日に発表した2021年度の貿易統計速報では、輸出額から輸入額を引いた額が5兆3748億円の赤字と、2年ぶりの貿易赤字(輸出額は23.6%増の85兆8785億円、輸入額は91兆2534億円)となりました。
また22年3月の貿易収支は、8カ月連続の赤字となっています。貿易赤字ということは、支払いのために日本円を外国の通貨に替える金額(輸出)より、外貨を円に替える金額(輸入)の方が大きいということです。つまり、支払いをするために円を外貨にする需要が増えるため、貿易赤字は円安の要因となります。
エネルギーについては、ウクライナ情勢を受けて米国とカナダがロシア産の石油・天然ガスの輸入をすでに禁止しており、英国も段階的に、EUもロシアエネルギー依存からの脱却を急速に進めている状況です。液化天然ガスの価格もロシアから欧州への天然ガス供給が減少したことで今月過去最高値を付けており、高止まりが予想されています。そうなるとエネルギーの多くを輸入に頼る日本の貿易赤字はしばらく続く、つまり円安傾向もしばらくは続くのではなか、という見方が強まっているのです。
今週の日経平均の値動き
4月15日の日経平均株価終値は2万7093円19銭、同22日の終値は2万7105円26銭で、
米国の金融引き締め加速に対する警戒感などから週末に下げ幅を縮め、週間では約12円の上昇となりました。
為替が円安になると円換算した際に海外収益が膨らむことから、自動車などの輸出関連株が上昇し、日経平均も上昇する傾向にあるというのが相場ではよく言われることですが、為替市場の急速な動きと比べると、日本株はあまり動いていない印象です。円安で輸入品など物価の上昇が日本経済や企業業績に与える影響が懸念されているほか、3月期決算シーズン本格化を前に、持ち高整理の売りや様子見もあったのではないかと推測します。
今月は2万6000~2万8000円のレンジ相場のように見えます。
東証グロース市場ではメルカリ(4385)の下落が目立ち、今週連日で年初来安値を更新しました。東証マザーズ指数も今週は週足で続落となっています。
今回は、なぜ円安が加速しているかを解説しました。4月28日には、黒田日銀総裁の定例記者会見が予定されているので、円安にどう言及するか、注目してみてください。