はじめに
営業にとって、提案するお客様のことをリサーチするのは当然ですが、トップセールスと呼ばれる人たちは、他にどんな点に注意を払っているのでしょうか?
元キーエンスのトップセールス・天野 眞也( @amanotch_ch )氏の著書『シン・営業力』(クロスメディア・パブリッシング)より、一部を抜粋・編集して営業としての勝ち筋について紹介します。
あなたは競合営業のことを知らない
法人営業をしていると、つい自分とお客様以外のことを見失いがちですが、自分と同じようにお客様に商材を買ってもらいたい競合企業がほかにいることを忘れてはいけません。
皆さんは、担当しているお客様のところに何社ぐらいの競合が出入りしているか知っていますか?
この質問は、コンサル時代や営業研修をしていた頃によく、参加者の方にしていたのですが、そこで多かった答えは「2~3社」でした。では、その2~3社の社名は分かりますか?
「分からない」という方は、ピンチです。すぐさま競合企業はどこなのかお客様に聞いて把握しましょう。ここを放置しておくと、いつの間にか競合企業にシェアを奪われてしまった、なんてこともありえます。ライバルなんですから当然ですよね。
競合企業の社名は把握しているという方に、さらに質問です。
競合企業の営業担当者がどんな人か分かりますか?
ここ、非常に重要なポイントです。なぜなら、あなたが営業として直接戦うのは、「競合企業」ではなく「競合企業のなかの営業」だからです。
営業である以上、競合営業と戦うということを常に心得ていないと、「確度が高いと思っていたのに失注した」ということがたびたび起こります。でも実際には「確度が高い」というのは思い込みであって、対戦相手(競合企業の営業)の動向を把握しておらず、適切な対策を取れなかったことが失注の原因かもしれないのです。
例えば、プロ野球のバッターが、対戦チームのピッチャーのことを調べずに打席に立つでしょうか。サッカーだって、自分がマークする相手がどんな選手か分かった上で対決しますよね。スポーツでは当たり前のように行われている「戦う前の準備」が、営業担当にとって必要ないはずがないのです。
競合営業を知る方法
では、「競合営業」の情報をどのように得るかについて紹介します。
単刀直入にいうと「お客様から教えてもらう」です。
見積もり金額といったベーシックな情報も大事ですが、それより知りたいのは、競合営業がお客様に対してどういうアプローチをしてきているのか? お客様の社内にどんな人脈を築いているのか? 自分より前から長く担当しているのか? 最近来た人なのか? などです。
可能ならば、営業担当者の役職や個人名までも把握したいところです。個人名まで把握したい理由はなぜかというと、別の営業先でも競合になるかもしれないからです。
法人営業の世界では、競合企業の同じ営業担当者と戦うことがよくあります。競合営業がお客様にどのようなアプローチや提案をしたか? お客様とどのような関係構築をしているか? という情報が競合営業の個人名とセットで得られていたら、「また競合のAさんとあたった。うちとしてどう対策を取ろうか?」と具体的に対策を練れます。つまり、競合営業より先回りの動きができるようになるのです。
ちなみに競合営業の情報収集に関して、これはトリッキーに思われてしまうかもしれませんが、私は営業先で入れ違いになった競合営業を見つけたら、直接お話をしていました。すかさず名刺交換もして、役職や個人名を本人から直接得ていました。
競合営業だからといって、あからさまに敵対視してコミュニケーションを取らないのは、情報を得る機会を逃す、「もったいない行為」だと考えていたからです。個人名までの把握は、人によっては難易度が高いかもしれませんが、どんな競合営業がお客様のもとに提案に来ているかは、可能な限り把握してください。