はじめに

競合営業と自分の立ち位置を把握する

競合営業の情報収集をするなかで、探ってほしいことがあります。

それは、「お客様のなかでの営業担当ランキング」です。

お客様が、あなたを含む各社の営業担当者のことをどう思っているかを把握しながら、「お客様にとって評価の高い営業担当の1位は誰か?」「自分は何番手ぐらいに位置していそうか?」を理解することで、お客様にどうアプローチすることが望ましいかが見えてきます。事例として、私の体験談から紹介します。

私が新人営業として、あるメーカーを担当していた時のことです。そのお客様には、似たようなサービスを売っている会社が複数社出入りしていました。

仮にA社、B社、C社とすると、私が担当した時点でのランキング1位は、A社の代理店のハネダさん(仮称)という方でした。彼は、4~5年、お客様のところに通い続けていて、彼とお客様の担当者は気心知れた仲でした。私も負けじと熱心に通い続け、肌感覚としては、最下位から2位までランキングを上げることができました。

しかし、1位のハネダさんの壁はとても厚いものでした。お客様からも、「ハネダさんとは一緒にたくさんの課題を解決してきたから、天野くんも頑張ってくれてるのは分かるけど、今は難しいかな?」とはっきり言われてしまったのです。

お客様にご契約いただいて売上も上がっていましたが、ハネダさんの会社からシェアを奪うことは今は難しいという状況。それでも私は虎視眈々とチャンスを窺っていました。すると、その日は突然やってきました。

A社の代理店のハネダさんを重用していた担当者が異動したのです。これにより、新しい担当者とフラットな状態から関係性を築くことになり、私自身の営業力をいかんなく発揮することでやがてランキング1位になりました。そして、かつてハネダさんが持っていたシェアをすべて獲得することができました。

ここまでうまくいったのは運もありますが、法人営業の世界では「お客様の担当者が変わる」ということはたびたび起こります。このタイミングをチャンスにできるかどうかは、営業の力の見せ所です。

では、どのようにして競合営業と自分の立ち位置を把握するか? 私は、担当者がオープンな性格の方ならば、「今、私は何番目ですか?」などと茶目っ気ある感じでストレートに聞いていました。

前提として、私たち営業がするのは「売り込み」ではなく、お客様にとって利益が期待でき、お客様がビジネスを進めるための力添えをする提案ですから、お客様も担当営業がオープンなコミュニケーションを取ってくれれば、営業への警戒心が薄れ、このような情報もくださるようになるのです。

図 競合営業と自分の立ち位置を把握する

戦うべきではない競合営業もいる

先ほどの体験談は「うまくいった話」でしたが、逆に私が「この競合営業には勝てない」と思ったエピソードをご紹介します。

その競合営業はB社のスズキさん(仮称)という女性の方でした。

彼女が担当していたお客様から、「B社のスズキさんがうちの営業担当をしている間は、俺は他のメーカーの営業担当とはなかなか商談できないよ」と伝えられたことがありました。どれだけ固い絆で結ばれているんだろう?と驚きましたが、実際に彼女とお客様とがコミュニケーションをしている姿を見た時、お客様の懐に入るのがとにかくうまいなと思いました。決裁権がある方からは実の娘のように可愛がられている様子でした。

その姿を見て、私は、1位を切り崩そうとせずに、現状を維持しながらチャンスを窺う作戦に切り替えました。

なぜか? お客様が「このままの状況」を強く望んでいたからです。「なかなか商談はできないよ」と直接私に伝えてくるぐらいですから、現状に大きな課題を感じておらず、かつ競合営業と非常に良好な関係性を築いているなかで、変化を求めていなかったのです。

この場合、仮に無理矢理ポジションを奪おうものなら、どれだけお客様のビジネスに価値ある提案をしていても、私はお客様から嫌われていたと思います。

窓口である担当者に嫌われてしまったら、営業としては致命的なミスです。また信用されるまでに時間が掛かりますし、そもそも会ってくれなくなることだってあるのです。

このように、競合営業が実力的にもエースレベルで、お客様からの支持もランキング1位の場合、直接対決は避けながら機を待つことも作戦のひとつです。

ちなみに私は、そんなライバル相手にも「今戦うべきでない」と判断しただけで、現状を維持しつつチャンスは窺っていたのですが、これには理由があります。

それは、法人営業の世界では「お客様の担当者の変更がある」のと同じく、「競合営業の営業担当の変更もある」からです。このことも法人営業の仕事の面白いところ。いつチャンスが巡ってきても仕事を提案できるように、「競合営業と自分の立ち位置」については、常に把握しておきましょう。

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