はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は内藤忍氏がお答えします。
妻の年収400万円、夫の年収700万円の共働き夫婦です。現在子供がひとり(3歳)います。そして、今年もうひとり生まれる予定です。子供がもうひとり生まれることと、妊娠を機に私の病気が発覚し、今後、フルタイムで働き続けられない可能性がでてきて不安になっています。
不安の大きな原因は、これまで特に貯蓄を意識せずに余ったら貯蓄する生活であったため、4年前に購入した都内一戸建ての住宅ローンがまだ4,000万円ほど残っているからです。そこで、今後のことを考え、資産運用をしていきたいと考えております。現在の固定支出と資産は以下の通りです。
【住宅ローン】13万円/月(65歳まで)
【生命保険】4万円(夫:終身60歳払込1,000万円、妻:学資保険として子供15歳払込で300万円)
【医療保険】9千円/月(夫婦終身60歳)
【保育園】3万円/月
【預金】900万円
【投資信託】140万円(2年半前に始め、現在6万円/月投資)
【株】4,000万円(夫会社のストックオプション)
【不動産投資】ワンルームマンション(古いために2年前の査定では売却額400万円)
子供が増えることもあり、夫の強い希望で今後1年以内に予算200万円で車の買い替えを考えております。これまで資産形成や投資に無頓着で、投資信託もなんとなく始めました。
投資信託をこのまま続けた方がよいか、ストックオプションで取得した株をローンにあてるべきか、それとも保持しておくべきかを判断できず、ただ保持し続けている状態で、夫婦ともども途方に暮れております。
ただ、病気もあり、投資を勉強するよい機会とも思っております。夫の収入のみになったときを考えて、現状の負債と資産を考慮して、今後どのような資産形成を行っていけばよいかのアドバイスをお願いいたします。
(30代後半 既婚・子供2人 女性)
内藤: お金との付き合いは人生が終わるまで続きます。これから数十年単位の長期的な見通しを考えながら、戦略を立てていかなければなりません。
まず必要なのは現状把握
その第一歩になるのが「現状把握」です。自分の資産が現在時価でどのくらいあるのか(ストック)を把握すること、そして毎月の収支(フロー)についても大きな流れを掴んでおくことが重要です。
資産の現状把握については、保有している投資用不動産はもちろん、ご自宅についても、現時点での評価額を査定してもらいましょう。資産価値とそれが生み出す収益について把握しないと、今後のアクションプランを立てることができないからです。
また、毎月の収支についても、借りている住宅ローンの金利がどの程度なのか、金利が上昇するとどのくらいの負担増になるのかをシミュレーションしてみましょう。
資産におけるストックオプションの割合が多い場合
ストックオプションに関しては具体的な銘柄がわかりませんので、最終的なコメントはできませんが、勤務されている会社の株式であればすでに行使し、株式として所有している場合、勤務先のリスクと資産のリスクが同じ会社になっていることになります。
ひとつの会社の株式に資産が集中していることにもなりますから、今後どのように分散させていくかを検討した方がよいと思います。
ローンを返済すべきか、投資に回すべきか
ローンを返済すべきか、投資に資金を回すべきかは、その人の借入状況やリスクに対する考え方によって変わってきます。
原則としては、定期的な返済を無理のない範囲で行いながら資産運用をしていくのがよいと思いますが、運用利回りが極端に低い場合は、むしろローンを返済して借入金利の支払いを下げる方が得策ということもあり得ます。
資産運用は長期分散投資から
資産運用に関しては、自宅を含め不動産をすでにに保有しているということですから、まずは金融資産を中心とした長期分散投資からはじめるのがよいでしょう。
低コストのインデックスファンドを組み合わせて、国内外の株式・債券・REITといった資産に分散投資していくのです。また毎月の積立も並行して続けることで、資産を積み上げていきます。
すでに支出が決まっている車の購入については、運用資産からは切り離し、資金を確保しておく必要がありますが、それ以外の資金は流動性のある金融資産で運用して問題ないと思います。
FPに相談して不安を解消する
資産運用に関して、自分たちだけで考えても不安が解消されないのであれば、専門家に相談するのもひとつの方法です。
ファイナンシャルプランナー(FP)にマンツーマンで資産運用の相談をすれば、資産管理の方法についてアドバイスがもらえるだけではなく、相談することによって不安も解消していくはずです。
ネットで検索すると、たくさんのFPを見つけられますから、何名かコンタクトしてみて、信頼できそうな実績のある方を選ぶようにしましょう。
また相性も重要ですから、まずは一度会ってみて、継続的に相談するかどうかを決めるのがよいでしょう。
お金の不安は問題を具体化して、それに対する対策を考えることで解消していきます。まずはご自身の現状認識から始めてみてください。