はじめに

円安の背景を考える

ほかに出てきた話題は「FX(外国為替証拠金取引)を始めようと考えている」でした。メディアで「悪い円安論」が連日報じられ、専門家も1ドル=150円、200円と今後も円安になると言っていたから、「円を売ってドルを買えば簡単に儲けられるのではないか」とのことです。しかし、情報に踊らされる前に自分の頭で考える必要があるでしょう。

今回の円安の背景はひとえに日米間における金利差の拡大にあると言えます。金融緩和を継続する日本に対して、インフレを退治すべく利上げをしている米国という明確な違いがありますから、円安傾向になるのは当然です。しかし、為替も株も将来を織り込んで値段が動くものであり、ある程度の金利差が開いていくことを織り込んだ状態がいまの水準です。

米国が利上げを続けていくなかで景気が減速していけば、いま想定されているよりも利上げペースは鈍化するでしょうし、再びコロナで行動制限がかかったり、ロシア・ウクライナ事案で不測の事態が起きたりすれば、それもまた利上げペースの減速に繋がります。そうなれば、一時的には円安傾向は鈍化します。

メディアで円安の話題が増えたとか、専門家が「いくらになる」といった情報だけでつどつど投資スタイルを変えていたら、ただ疲弊するだけで終わってしまうのです。

利上げ=株安は本当か?

最後に言っていたのが、「いまは米国が利上げ局面に入ったから株式投資は不利だ」というものでした。しっかりとデータを見たのか聞いてみると、それもまたネット上でそのような情報を見たというのです。下図は米国の政策金利と株価の推移をグラフにしたもので、網掛け部分が利上げ局面です。

言うまでもなく、利上げ局面だから株安というのは印象論でしかないことが分かります。そもそも、景気が過熱しているのを抑えるために利上げしているのだとすれば、利上げ局面は好景気なわけですから、株高であることにも納得できるでしょう。

しかし、今回の利上げ局面は景気が過熱しているというよりは、エネルギー価格や資源価格の高騰による高インフレを抑えるための利上げです。金融引き締めによって景気が大きく減速するリスクシナリオは頭に入れておくべきでしょう。

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