はじめに
インターネットやSNSで情報が過多にあふれる現代においては、それらの真偽を見定め、正しく理解することが求められるようになりました。情報を「理解する」とは、具体的にはどういった状態を指すのでしょうか? 『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』を上梓した山口拓朗さんに、情報を正しく理解する思考のプロセスについてお聞きしました。
※本稿は『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』の一部を抜粋し、再編集しています。
情報過多社会で活きる「批判的思考」
変化のスピードが速い時代です。日々、大量の情報が飛び交う世の中です。そうした中、わたしたちの理解だけが「停止」していていいはずがありません。ここで武器となるのが「クリティカル思考」です。
クリティカル思考とは、常識や主観、感情などに流されず、情報を見定めようとする思考プロセスのこと。「批判的思考」と呼ばれることもあります。平たく言えば「この情報は本当に正しいのか?」と考えることです。常識や前提をあえて疑ったり、情報を分析的に読み解いたり、自分の思考のバイアス(偏り/思い込み)に気づいたりすることで、誤った理解やズレた理解を防ぐことができます。
たとえば、ニュース記事の中には、特定の人物をヒール(悪役)に仕立てようという意図が透けて見えるものがあります。論理を飛躍させる。重要な情報をわざと省く。ミスリード(誤読)を誘う。意見を事実のように語る。あいまいな言葉を使う―― などなど。クリティカル思考が働いていなければ、それらの罠にはまりかねません。特定の情報や考えにとらわれすぎることなく、複数のソース(情報源)にあたってみることもクリティカルな行動と言えます。もちろん、猜疑心が強すぎてはいけませんが、「この情報は正しいのだろうか?」という意識を持つことは、情報に翻弄されないためのリスク回避策でもあるのです。