はじめに
自分のキャリアをコントロールする
社員が数十名の小規模な会社や、ベンチャー企業などを除き、ほとんどの会社には「人事異動」「転勤」があります。会社は、これらの制度について「ジョブローテーションによって複数の職種を経験させ、経営幹部候補となり得るジェネラリストを育てる」などと説明します。
しかし、実際には、ジョブローテーションとは、社内の「穴」を塞ぐための会社都合の措置に過ぎません。そして、はっきり言ってしまえば、ジェネラリストとは「特にこれといって何も強みがない人」とほとんど同義です。
多くの会社では、新卒一括採用・終身雇用が未だに主流で、中途採用で積極的に社外からの人材獲得をせず、「社内の人材プール」から組織全体のニーズを充足させようとするから、個人のキャリアを無視してコロコロ職種を変えさせたり、数年おきに転勤を命じたり、という無理が生じてしまうのです。
また、このお話に出てきた通り、会社全体の人件費を減らすなど「裏の目的」のために、見かけ上の「組織変更」をするというケースも、決して珍しくはありません。
そして、もっと恐ろしいのが、人事異動や組織変更を、「社員を辞めさせる手段」「問題を起こした社員を反省させる手段」として使う会社が、現実に多くあることです。
名作ドラマ『半沢直樹』でも度々登場する光景ですが、日本の老舗企業の場合、問題を起こした社員は、クビになるのではなく、地方子会社などに「出向」させられます。もしくは、「辞めさせたい社員」をあえて本人の希望と真逆の部署に異動させて、強引に退職に追い込む、ということもあります。
「事実は小説より奇なり」というように、「こんなに理不尽な異動があるのか。これじゃ、『辞めろ』と言っているのと同じではないか……」と、周りの同僚の理不尽な人事異動に驚かされた経験が、私にも何度もあります。
会社に「忠誠」を誓って、会社に指示されるがままに人生を送っても構わない、と言えるだけの「愛社精神」や「会社への強い信頼」がある人はそれでもいいと思います。
しかし、そうでないのなら、納得のできないことにははっきりと「NO」の意思表示をしないといけません。
会社に忠誠を誓い人生を預けても、会社側は、将来あなたのことを平気で捨てる可能性もあります。会社都合のジョブローテーションに黙って従っていると、5年後、10年後にはすっかり競争力のない弱い人材になってしまうかもしれません。
自分のキャリアの方向性は、しっかりと自分でコントロールしましょう。
望まない人事異動を言い渡され、どうしても拒否できない場合は、「転職」でキャリアの方向性を取り戻すという手段もあります。
面接に「数撃ちゃ当たる」は通用しない
はじめての転職活動では、最初から「自分目線」だけで応募企業を絞りすぎず、たくさんの求人に目を通すのが大事です。
しかし、勘違いしてはいけないのは、転職は「数を撃てば当たる」ものではないということです。熟考なしに、「数」を追ってはいけません。
多くの求人票の中から、自分に狙えそうなものを吟味するプロセスは重要ですが、片っ端から何にでも応募すればいいわけではありません。
中途採用の求人には、明確な「採用条件」や「必要とされる経験」があります。明らかに見込みのない求人に、何十件、何百件応募しても、恐らく内定が出ることはありません。
一方、適当に応募してもあっさり内定が出てしまう会社というのは、「社員が次々に離職していて、誰でもいいから採用したい」というブラック企業である可能性が高いです。
転職エージェントの中には、「とにかく20社応募しましょう」「書類通過率は2~3割程度なので、とりあえず数で勝負するのが基本ですよ」などと言う人もいます(私も実際に言われたことがあります)。
しかし、数で勝負して、たまたま当たった会社が、本当に自分の望むキャリアを実現できる場所なのでしょうか?
もし、転職の意思がそれほど強くはなく、「内定は出なくてもいいから、とりあえず面接ってどんな感じか受けてみたい」など、軽い気持ちであれば、それでもいいのかもしれません。
しかし、転職をできるだけ早い段階で決めたいという本気の意思があるのであれば、「もし内定が出て、条件が合致した場合には、ぜひ入社したい」と強く思える企業以外には、はじめから書類を送らない方がいいです。
新卒の就活とはちがって、中途採用の転職活動では、たくさんの会社を同時に受けるのは悪手でしかありません。軽い気持ちで面接を受けて、あっさり落ちたり、途中で選考を辞退したりしてしまうと、転職エージェントからも「この人は見込みがない」と思われて、いい案件を紹介されなくなってしまうこともあります。
時間や労力を無駄にしないためにも、応募企業は慎重に選びましょう。