はじめに

どこに投資をするのか、円安や株価下落によって判断が難しい現在。

世界トップクラスのブラックロックは、どのような投資方針で商品を設計・組成しているのか。それを知ることで、今後の投資判断の参考になるかもしれません。


日本のGDPを超えるブラックロック

たった1社だけで、日本の経済規模を表すGDP約550兆円をはるかに上回る、1000兆円規模(※)の運用資産規模を誇るのが、世界最大級の運用会社「ブラックロック」です。
※2020年12月末時点で8.76兆ドル。2022年6月9日時点のドル円相場(約134円)を適用すると1173兆円超。

ブラックロックは1988年に創業され、まだ創業40年にすら満たない企業です。米メリルリンチや英バークレイズの資産運用部門などとの経営統合により急速に規模を拡大してきた、最先端テクノロジーを活用した資産運用とリスクマネジメントに強みをもつグループです。

世界最大級の「iシェアーズETF」という人気シリーズを始め、商品ラインナップも増えてきています。このETF(上場投資信託)やファンドなどを通じて多くの企業の大株主に名を連ねており、米国会社四季報などでよく目にします。また、議決権を保有する株主としても、実質的に世界中の企業に大きな影響力を持っています。

ラリー・フィンクとステークホルダー資本主義

ブラックロックのCEO(最高経営責任者)ラリー・フィンク氏が、投資先企業のトップに送る書簡を要約しました。

・「ステークホルダー資本主義」は、企業成長に関わる利害関係者と地域社会が相互に利益をもたらす関係を築くことである。
・ほぼ全てのステークホルダーが、世界経済の脱炭素化において企業が果たす役割に期待し、長期にわたり計画を推進する際に膨大な雇用機会を創出する。
・サステナブル投資に向かう地殻変動的な資本の再配分は加速し続け、ネットゼロ社会への移行により、全ての企業、全ての業界が変貌する。
・ブラックロックがサステナビリティを重視するのは、環境保護主義者だからではなく、資本主義者であり、ブラックロックがお客様の受託者であるためである。
・ブラックロックは、石油・ガス会社から一律に資本を引き揚げる方針はとっておらず、移行を先導する企業への投資はブラックロックのお客様にとって重要な投資機会をもたらすことになる。
・変化のスピードは先進国と途上国で大きく異なるが、全ての国において脱炭素化技術に対するかつてない規模の投資が必要なことに変わりはない。
・企業が株主に対する責任の下、環境・社会・ガバナンス面においてどのような方針を定め対応しているかという点を含め、どのように事業を展開するのかを明示することを企業に求める。

【要約】2022 letter to CEOs:資本主義の力

フィンク氏のいうステークホルダー資本主義は、一見素晴らしいことのように聞こえますが、ESG投資(Environment:環境、Social:社会、Governance:ガバナンスも考慮した投資)を推し進めるあまり、時代の変化を投資先の企業に強制し、それをマネタイズしようとしているのではないか、という点については一考してみる価値はありそうです。

特に、気候変動が深刻かつ持続的に、経済成長に悪影響を与えるため、投資家にも「気候リスクは投資リスク」であることが浸透してきており、「低炭素社会への移行・実現」が必要不可欠であると主張しています。近年の急速な技術革新にも関わらず、この移行には数十年もの時間がかかるとしながら、その資本力と発言力を用いて、企業のみならず各国政府をも拙速に突き動かしている印象がぬぐえません。

低炭素社会への移行が、徐々に持続的に行われることを否定するかたはほとんどいないと推測されますが、その、ムーブメントが速すぎた場合、現在まさに起こっているように、それは資源・エネルギー価格の混乱や、次世代テクノロジーや資本の寡占化と、一部既存ビジネスの強制退場へとつながる危険性をはらんでいます。

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