はじめに
米ドル/円でFXの取引を始めるとしましょう。米ドルが「上がる」と考えるなら「買う」ことになり、逆に「下がる」と思うなら「売る」ことになります。では、「上がる」か「下がる」かは、どのように考えたら良いのでしょうか?
米ドルの売買の考え方
「為替は森羅万象に通じる」という言葉があります。多くのいろんなことが変動要因になるということです。たとえば、米大統領がドナルド・トランプ氏だった時代、その不規則発言により「トランプ・ショック」で米ドルが急落することもあるかと思えば、朝鮮半島情勢への懸念などから日本の安全保障リスクが警戒されることで円が急落することもあります。政治や安全保障、そしてもちろん数多く発表される経済指標など経済要因も含めて、まさに「森羅万象」の変動リスクを注意しないといけないなら、ちょっと大変そうですよね。
ただ、そんなに心配する必要はありません。為替相場の主たる変動要因は金利差です。たとえば米ドル/円の場合なら日本と米国の金利差、つまり日米金利差でかなりの状況が説明できます。
米ドル/円を取引する場合、「上がる」か「下がる」かを考える時には、「森羅万象」のことが影響することは理解しつつも、基本的には米国の金利が上がるか、それとも下がるか、それによって日米金利差がどう変化するかを予想することこそが最も重要なことなのです。
実際の為替相場を見ながら確認してみましょう。図表1は、2021年の米ドル/円のチャートに、日米の金利差を重ねたものです。これを見ると、2021年前半に米ドル/円が4月にかけて大きく上昇した動きは、日米金利差の変化ときれいに重なっていたことがわかるでしょう。2021年前半の米ドル/円の「先読み」は、かなりの割合で日米金利差の変化の予測が鍵になっていたといえるでしょう。
ここで、6月頃から米ドル/円と日米金利差がかい離したことが気になった方も多いかもしれません。この金利差からかい離した米ドル/円の動きはどう理解したら良いのか。可能性が高いのは、連動する金利差が変わったということでしょう。
図表2は米ドル/円に、やはり日米金利差を重ねたものです。ただ同じ日米金利差でも、図表1は日米の10年債利回りを使ったのに対し、図表2では日米の2年債利回りを使っています。
金利には種類があります。大きな分け方としては短期金利、中期金利、長期金利となります。このうち、図表1で使った10年債利回りは長期金利に入ります。そして図表2で使った2年債利回りは短期金利(※)になります
※中期金利とされる場合もあります。
一般的に、為替相場の変動が景気をテーマにしている場合は長期金利、つまり10年債利回りとの相関性が高くなります。これに対して2年債利回りは金融政策を反映する金利と位置付けられています。