はじめに

欧州統一通貨の「ユーロ」は、1999年1月に誕生し、当初は欧州の11ヵ国で導入されました。それまでは、独の通貨はマルク、そして仏の通貨はフランでしたが、それらがユーロに換わったのです。

そして、そんなユーロを導入する国は、2022年6月現在で19ヵ国まで拡大しています。このユーロ導入国の経済規模を合計すると、米国に次ぐものとなることから、ユーロは米ドルに続く「第二の基軸通貨」と呼ばれました。

「第二の基軸通貨」の問題点

ただ、このように複数の国で構成された通貨だけに、いくつかの問題も抱えています。例えば、一つの国の経済政策において、金融政策と財政政策は、前者は中央銀行が、そして後者は財務省が担うケースが一般的です。ところが、複数の国で構成されているユーロにおいては、中央銀行こそECB(欧州中央銀行)が作られたものの、財務省は各国にそれぞれに存在したままで、「欧州統一財務省」はありません。

その危うさが問題として表面化したのが、2010年前後に起こった「欧州債務危機」でしょう。始まりは、2009年にギリシャ財政赤字の事実上の「粉飾」が発覚したことでしたが、その後債務問題は、イタリアやスペインといった欧州の大国にも波及し、欧州の金融システムを揺るがす大問題となったのです。これこそ、財政政策の主権は、各国が握ったままといった中途半端なシステムが招いた問題だったといえるでしょう。

財政政策の主権を、それぞれの国が握ったままになっていることから、ユーロ圏に統一された国債は存在せず、この結果「国債利回り=金利」も「統一されたユーロ金利」はありません。これで少し困るのは、金利差の考え方です。

為替相場は金利差と密接な関係があるため、例えば米ドル/円なら以前に説明したように、日米金利差の影響を強く受けるわけです。ではユーロ/米ドルはどう考えたらよいか。

「統一されたユーロ金利」がないため、ユーロの金利としては、ユーロ参加国の中で最大の経済大国である独の金利が参考に使用されるのが一般的です。要するに、ユーロ/米ドルの行方を考える上では、独米金利差、ユーロ/円なら日独金利差が使われることになります。

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