はじめに

屈指の低金利通貨

このように、「第二の基軸通貨」として華々しく登場したものの、単一国家ではなく、複数の国家で構成されるといった、まだまだ「実験段階の通貨」というのがユーロの実情でしょう。そんなユーロは、2010年前後の欧州債務危機を凌いだ後、2014年には日米などに先駆けて政策金利をマイナスにするといったマイナス金利政策を採用したことで、「世界屈指の低金利通貨」になりました。

低金利通貨のユーロは、金利差からすると売られやすいという特徴になります。そして売られやすいユーロは、当然ながら下落相場との相性が良く、金利差収益(スワップポイント)と相場下落に伴う利益といった2つの収益機会の追求が可能になります。

そんな「ユーロ売り」がFX投資家にとって大きなチャンスとなったのが、2015年前後のユーロ急落局面でした。元々ユーロ/米ドルは世界で最も取引量の多い通貨ペアでしたが、低金利ユーロにとって相性の良いユーロ安の大相場が展開したことで、個人投資家にとってユーロ/米ドル、ユーロ/円の取引が大きく浸透することになったようです。

ユーロ取引の注目材料

さて最後に、そんなユーロを取引する上で、主に注目する材料について確認しましょう。ユーロと言っても、例えばユーロ/米ドルの場合は、米ドルの要因で変動することも多いので、米ドルに影響する米国の金融政策や経済指標は大いに注目されることに変わりはありません。

一方で、ユーロに直接影響するものとしては、まずは「ユーロの番人」といった立場であるECB関連のイベントでしょう。ユーロ圏の金融政策を決めるECB金融政策会合は、原則として6週間ごとに開かれます。

ところで、このECBの中でも、とくに個性的な存在とされるのが、独の中央銀行、ブンデスバンク、通称BUBA関係者です。独では、第一次、第二次といった二度の世界大戦の敗戦後の苛烈なインフレを経験した影響から、インフレに対する厳しい姿勢、「インフレ・ファイター」としての考え方が図抜けて強いとされます。

ユーロ圏最大の経済大国である独、そして世界の中央銀行の中でも代表的な「インフレ・ファイター」とされるBUBAが、ECBの金融政策を通じ、ユーロにとっての大きな変動リスクになる可能性もあります。

また、ユーロに影響する可能性のある経済指標としては、ユーロ圏のGDPや物価統計がありますが、既に述べたように、「統一されたユーロ金利」の代わりとして独金利が参考にされるため、独の代表的な経済指標にも注目が集まります。具体的には、IFO景気指数やZEW景気指数などがそれに該当するでしょう。

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