はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は野瀬大樹氏がお答えします。

私は現在、2つのネット証券会社を利用しています。A証券はコツコツ積み立て投信を約2年間。B証券は口座を開設したばかりで、株式の短期投資をやっている状態です。最近、B証券がA証券と同じくらい信託報酬の安い投信をいくつか持っていることを知り、乗り換えを検討しています。

ですが、今までの評価損益がわかることを考えると、このままA証券を持っていてもいいかなと悩んでいたら、NISAでどちらを選べばいいかわからなくなってしまいました。なお、A証券はアベノミクス前から積み立てていたこともあり、今時点ではそこそこ買っています。これらをB証券に移す際に税金がかかるのであれば、A証券のままでもいいのかなとも思います。そこで、次の2つの点を教えてください。
1.証券口座は寄せるべきか、分けたままでもよいのか。
2.NISAはどちらの証券会社で口座開設するべきか。
(30代前半 既婚・子供2人 男性)


野瀬: まず、証券口座の移管について少し誤解があるようですので、まとめておきたいと思います。

証券口座は寄せるべきか、分けたままでもいいのか

証券口座Aに株や投資信託があり、これを別の証券口座Bに移し替えたい場合、方法として考えられるのは以下の2つです。

(1)いったん口座Aの株・投信をすべて売却し、同じ株・投信を口座Bにて購入する

(2)口座移管手続きを行い口座AからBに株・投資信託を移す

まず(1)の方法ですが、これは正直あまりおすすめできません。なぜなら、まず売買手数料がかかります。また、すべての含み益・含み損が確定してしまうので、もし含み益がある場合、その利益に対して税金がかかります。

(2)の方法も確かに移管手数料はかかるのですが、(1)のようなデメリットがないため、スムーズに移すにはおすすめです。ご質問のように移す際に税金がかかることもありません。

証券口座はいくつまで?

さて、この証券口座「寄せるのがよいか、分けたままがよいか」ですが、私の個人的な考えは「2~3ぐらいなら分けてもよいが、それ以上に口座を増やすのは考え物」です。

理由は以下の2つです。

1.理想はひとつの口座に集中させる

理想は1つの口座ですべて管理することです。

私は以前、同系列の銀行と証券会社を使っていたので、預金・定期預金・外貨預金・株・投資信託をすべて同じウェブサイトにて一覧でチェックしていました。

こうすることのメリットは、株や外貨、預金のポートフォリオが簡単に把握できてリバランスしやすいのと、株や投信も銘柄ごとの一覧を見られるので、毎日それをチェックすることで「日経平均や為替に対して保有銘柄がどんな反応を示すか」ということがだんだんわかるようになる点です。

しかし、証券口座がいくつにも分かれてる場合には、いちいち別のウェブサイトを開いて確認する必要がありますし、一元化しての比較・管理・把握が難しくなります。マネーフォワードは、この用途には正に合ったツールですので、積極的に活用してみてもよいのではないでしょうか。

2.幅広い銘柄を購入するなら2~3口座を保有

投信に関していえば、証券会社によって扱っている銘柄が違いますので、2~3程度の口座を用意しておき、「これがほしい」と思った時にすぐに動けるようにしておくことが大切です。

最近は即日開ける証券口座もありますが、実際は身分証明書を用意し、そこにお金を振り込んで……と、なかなか手間と時間がかかりますので、機を逃さずにほしい銘柄をすぐに買えるように取扱い銘柄の多い証券口座を2~3開いておくのがよいでしょう。

自分で何か「ひらめいた!」のに、口座がないという理由で買えないのは本当に悔しいですよね。「逃した”投信”は大きい」と思ってしまうものです。

私自身、現在3つの証券口座を持っており、1つは手数料が安い「メイン売買用」、あとの2つは取扱い投資信託が多い「投信用」としています。一年のうちほとんどをインドで過ごしているので、重視しているのは「サイトの使いやすさ」なのですが、最近はどこの証券会社も使いやすくなっているように感じます。

NISAはどちらの証券会社で口座開設すべき?

NISAのネックはやはり「120万円」という枠。つまり、大きな金額を投資するのには向かないということです。ただし、その枠を守りさえすれば、将来どんなに(たとえば1億円でも!)値上がりしても、その儲けに税金がかからないことになります。

そう考えると「小さく投資して、万が一ドカンと大化けしたら儲けもの」という投資に向いているのがNISAといえます。

質問者の方の場合ですと、現在行われている株式の短期投資において「IPO銘柄」や、いわゆる「不祥事銘柄」を狙い、運よくガツンと上がるのを待つ……というのが理想的といえます。

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