はじめに
今回は豪ドルとNZドルの特徴を紹介します。この2通貨をまとめてオセアニア通貨とも呼びますが、通貨には通称があるのですが、豪ドルの場合は「オージー」−−オーストラリアという意味ですから、そのまんまですね。そして同じオセアニア通貨であるNZドルの通称は「キウイ」、これはフルーツではなく、NZの国鳥、つまり鳥の意味です。
さて、そんな豪ドル、「オージー」は、代表的な資源国通貨として知られています。これは、豪州が資源輸出大国といった意味があります。その意味では、誤解されている可能性があるのは、同じオセアニア通貨のNZドルも、豪ドルと一緒に「資源国通貨」と考えることです。
というのも、NZの輸出に占める資源の割合はとても少なく、NZからの輸出の主力は農産物です。だから本当は、豪ドルは資源国通貨ですが、同じオセアニア通貨とはいえ、NZドルも資源国通貨とするのは間違いなのです。
豪ドル「オージー」
資源国通貨である豪ドルは、代表的な資源価格である原油相場と中長期的に見ても高い相関関係が確認できます。(図表1参照)。
【図表1】豪ドル/米ドルとWTI(2000年~)
ただし、豪州の代表的な資源輸出は鉄鉱石です。このため、じつはこれまでの豪ドルの値動きはかなりの割合、鉄鉱石価格で説明できました(図表2参照)。つまり、資源国通貨である豪ドルの先行きは、代表的な資源価格である原油相場はもちろん、より詳細にアプローチするなら、鉄鉱石価格の行方を分析する必要があったのです。
【図表2】豪ドル/米ドルと鉄鉱石価格(2020年1月~)
ところで、豪州からの最大の資源輸出先は中国で、主に輸出を通じて豪州と中国は強い関係がありました。そのため、豪ドルは中国の景気指標に敏感に反応する傾向もこれまで続いてきたのです。ただし、ここ数年豪州と中国の貿易関係に変化が見られることから、豪ドルと中国株の連動性も低下気味ではありますが(図表3参照)。
【図表3】豪ドル/米ドルと上海総合指数(2015年~)
さて、資源価格は、原油相場に代表されるように値動きが活発、つまり高いボラティリティーが基本です。豪ドルも、時に資源価格の乱高下に巻き込まれたような大乱高下となったことがありました。その代表例である、2008年のいわゆる「リーマン・ショック」前後の局面について少し紹介したいと思います。
「リーマン・ショック」とは、米国の大手投資証券の破綻をきっかけに、世界的な金融危機が広がった現象でした。ところで、そんな「リーマン・ショック」が起こる前、豪ドル/円は100円を超えたところから、急落に転じたのです。
それまで豪ドル/円は、2000年の50円程度から、この頃は100円を上回り、ほぼ倍となっていました。当時の豪ドルは、円に比べてかなり高い金利だったので、金利差に加えて、中長期的に上昇が続いた豪ドル/円は、1998年から始まった個人投資家の為替取引、FXにおいて人気の投資家対象だったでしょう。
ところが、上述のように2008年9月、大手米系投資銀行のリーマン・ブラザーズ破綻をきっかけとした「リーマン・ショック」を前後して、豪ドル/円はほんの数カ月で50円台までの大暴落となりました(図表4参照)。これには、当時、代表的な資源価格である原油相場などが大暴落に急転換したことなどの影響もあったでしょう。
【図表4】豪ドル/円の月足チャート(2000~2011年)
最後に、豪ドルを取引する上での注目イベントについて確認します。他の通貨同様に、中央銀行関連のイベントは押さえておきたいイベントの一つです。豪州の中央銀行は、「Reserve Bank of Australia」、このため略称はRBAになります。
このRBAの金融政策会合は、原則として毎月第1火曜日に行われます。例えば、2022年に予定された金融政策会合は、日米欧のそれが8回だったのに対し、豪州は1月を除く11回といった具合に、開催回数がとても多いことがわかりやすい特徴と言えるでしょう。