はじめに

──直感で動きそうになってしまった時に自分を制する良い方法はありますか?

柴山:資産配分は相場の都合ではなく自分の都合で変える、ということを意識すると良いと思います。例えば、退職して株の比率を下げるのは自分都合です。物価が上がって積立投資が厳しくなった時に、生活費や教育費優先で積立額を減らすのも自分都合。相場や周りを見るのではなく、自分や家計を見るようにすると無闇に損してしまう可能性は抑えられると思います。

中野:投資の目的を再認識することも大事ですよね。将来のためにお金を育てることが目的であれば、目先の値動きは気にする必要がありません。値動きを見ていると、つい動揺しますが、目的を反芻することによって右往左往を防ぐことができ、下落相場を乗り越える経験が増えることで冷静に対応できるようになります。

柴山:積立投資の場合は、株価が戻った時のリターンが大きいことも認識しておくことが大事です。リーマンショックの時は米国株が半値近くになり、3年後に下落前の水準まで戻りました。この間、積立投資を続けていた人は、株価が戻った時に下落前よりもお金が増えました。下がって上がったならプラマイゼロと思うかもしれませんが、一括で買うのではなく、株価が安い時も分散してコツコツ買っていたため、その分がプラスになって戻ったわけです。

中野:その点では積立投資のように自動的に買い付けていくことが大事ですよね。「余裕ができたら投資をしよう」と考える人は多いのですが、将来の人生に重要なお金と考えれば、投資資金の優先順位は上位に置く必要があります。例えば、家賃が10万円なら、積立投資の2万円と合わせて、家賃12万円の家に住んでいる、と考える意識に変えていくことも大事だと思います。


次回は、おふたりの投資の失敗談と、失敗を避けるコツを伺います。

【前編】:「中長期的にはあるべき価格に収まっていく」セゾン投信・中野晴啓氏×ウェルスナビ・柴山和久氏が見る現在の市場
【後編】:「借金して株を買っていた」。セゾン投信・中野晴啓氏×ウェルスナビ・柴山和久氏の投資の失敗談

この記事の感想を教えてください。