はじめに

ビール業界の税金戦争は終結するか?

ビールは、非常に高い税金がかかった商品です。

l缶350㎖に、約77円の税金がかかっているのです。l缶350㎖は230円程度なので、30%以上の高税率商品となります。これは、ビールが高級洋酒とされてきた時代の税制を引き継いでのものです。

発泡酒はビールよりも2、3割価格が安いのですが、この価格差も、税金の差によるものです。ビールよりも発泡酒の方がはるかに税率が低く、350㎖あたりに課されるのは約47円。そのため、発泡酒は安く売ることができるのです。

1990年代から、ビールメーカーは相次いでビールに類似した発泡酒を製造し、税務当局は頭を悩ませてきました。

しかしビールの高税率は、なにも最近になって始まったことではありません。また発泡酒の税率が低かったのも、昔からです。それなのになぜビールメーカーは、1990年代に突然、発泡酒の発売をし始めたのでしょうか?

これには、地ビールの登場が関係していると考えられます。

ビール業界は、これまで大手4社による寡占市場でした(沖縄のオリオンビールを除く)。ビールの製造免許を新たに取得することは事実上不可能であり、ビール業界は新規参入の余地がまったくないところだったのです。大手4社が、高い税率を課せられながらも税務当局に従ってきたのは、規制によって守られてきたからでもあります。

しかし1995年、ビールの製造免許が規制緩和され、「地ビール」と言われる新規参入者が続出しました。つまり、ビール業界は守られた業界ではなくなったのです。

そうなると、大手ビール各社にすれば、素直にお上に従うことが馬鹿馬鹿しくなっていきます。そこで、今まで「禁じ手」とされてきた発泡酒の発売に踏み切ったものと見られています。

税務当局の方も黙って見過ごしていたわけではなく、何度も法改正をして、この税の抜け穴を塞ごうとしてきました。しかしビール業界も、その法改正を潜り抜けるような商品を開発し、いたちごっこが続いていました。

結局、税務当局としてもこのままいたちごっこを続けても意味がないので、手打ちをすることにしたようです。

2026年には発泡酒とビールは税率が統合され、350㎖あたり約54円に変わることになりました。ビールはかなりの値下げ、発泡酒は少し値上げということになるのです。酒売り場の様子は、今後大きく変わりそうですね。

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