はじめに
個人ができるスタグフレーション対策は?
ただしインフレには、良いインフレと悪いインフレがあると冒頭でお伝えしました。
景気がよくなって需要が牽引するディマンドプル型のインフレは良いインフレです。需要が供給を上回ると、原材料価格などのコストが上昇してインフレとなる傾向となりますが、需要が増えることで企業の業績や従業員の給料も上がるので景気も良くなっていく…経済の好循環を産む状況といえます。
一方、足元の状況のようにコスト高でおきるコストプッシュ型のインフレは悪いインフレであるといえるでしょう。さらにスタグフレーションというのは、悪いインフレで、かつ景気も悪いという状況のことです。
賃金に関してみていくと、1991年にバブルが崩壊してから正社員の給与は上昇していき、1997年頃に平均的な給与はピークとなったものの、その後減少傾向が長いこと続いています。リーマンショックの影響や非正社員が増加したことも平均年収を下げる要因となったようで、この1990年代から2000年代の経済成長が停滞した期間は「失われた20年 」といわれることもあります。
国税庁が発表している、民間企業で働く会社員やパート従業員を対象とした民間給与実態統計調査で、2010年以降の平均給与の移り変わりを見ていきますと、2010年は412万円、2012年の408万円で底打ちし、2015年は420万6,000円、2020年は433万1,000円、そして2022年9月28日(水)に発表された民間給与実態統計調査では2021年の平均給与は443万円と3年ぶりの増加に転じています。とはいえ、1997年頃と比べると低水準であり、物価上昇と比べて給与の上昇は追いついていない状況といえそうです。
岸田政権は賃上げに取り組んではいますが、ウクライナ問題の終結も見えず、日本は世界で唯一マイナス金利を継続しているということで、金利差も意識されて円安外貨高というのも継続しそうです。
給料が伸び悩んでいるのにモノの価格は上昇し続ける……そうなるとスタグフレーションとなる可能性を視野に入れる、すでにスタグフレーションかもしれない、と考える必要があると思います。
スタグフレーションの状況下では、不景気で賃金アップが見込めないなか、インフレによってモノの価値が上がりお金の価値が下がっていきます。そうなると、生活コストは増加するものの、それを補う資金はなく、家計は圧迫されていきます。
スタグフレーションを乗り越えるには、本業以外に副業やサイドビジネスで、さらなる収入源の確保を検討してもよいのではないでしょうか。また、お金の価値が下がるので、預貯金など現金のみで持つのではなく、さまざまな資産に分散させることも有効と考えます。収入の一部を積み立てて資産運用していく、特に若い方は積み立て投資で早めに資産形成に取り組むというのは、時間的な優位性があるので検討していただければと思います。