はじめに

うつっぽくなった周りの人への接し方

コロナ禍で3年目のいま、私たちの生活は大きな変化に直面しました。変化に対応するには大きなエネルギーを使います。その疲労が、いま日本中を襲い、日本人の半数がうつっぽくなっているのです。しかし、残りの半数は、苦痛を感じていない。その結果、「うつの方に対する理解のなさ」が強くなっている時期にあります。

大切な家族、職場の同僚などがうつっぽくなっているとき、ぜひ、うつを理解し、適切なサポートをしてあげてほしいと考えています。

いざサポートをしようと考えたとき、「どうすればいいのかわからない」と相談に来る方も多くいらっしゃいます。よく本などに「寄り添ってください」と書かれていますが、具体的に何をすればいいかよくわからず、途方に暮れる方もいます。

うつは、一時的に思考が変わってしまう状態です。そのため周囲の人は、「考え方を変えたらいいんじゃない? 行動を変えたらいいんじゃない?」と言いたくなる。しかしこれは、熱が出ている人に「熱を出しても苦しいだけだから、熱を下げなさい」と言っているようなもの。理屈的には正しいかもしれませんが、苦しんでいる人の助けにはならず、むしろ苦しみが大きくなるのです。

うつの人には、「コロナでうつになるのも無理はない。いつものあなたらしくない感じ方考え方をするのも無理はない。疲れているだけだから、休めば元に戻る。でもそれも怖いだろうから、具体的にどうすればいいかを一緒に考えていこう」と伝えてほしいのです。

そして、「気合を入れて頑張れ、規則正しい生活をしろ」ではなく、熱がある病気の人にやってあげるように、普通の衣食住のサポートをしてあげることが大切です。これこそが「寄り添う支援」になると考えています。今は、教育すべきタイミングではない。ケアすべき時だ、と理解して接するようにしましょう。

著者プロフィール:前田 理香(まえだ りか)

公認心理師/うつ・クライシス専門カウンセラー/元海上自衛官
NPO法人メンタルレスキュー協会カウンセラー。事故や事件、自殺などショックな出来事を体験したクライアントや、うつ病を患っているクライアントと向き合い、カウンセリングを行なっており、多数の組織等の復職支援に携わる。2021年4月から、宇宙航空研究開発機構(JAXA)との契約に基づき、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在する日本人宇宙飛行士の健康管理運用業務(精神心理支援)に参加。

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