はじめに
ステーブルコインの今後の見通し
ステーブルコインは今では暗号資産取引に欠かせないものになっています。日本の暗号資産取引所ではステーブルコインの取扱いがほとんどないため、実際にどのようにステーブルコインが使われているのかわからない人も多いでしょう。簡単にいくつかの用途を紹介します。
決済通貨
国内取引所で暗号資産を売買するときは日本円建てもしくはビットコイン建てとなっていますが、海外ではBTC/USDTのようにステーブルコイン建ての取引が一般的となっています。
逃避資産
市場のボラティリティが大きくなると投資家はビットコインやアルトコインからステーブルコインに資金を移すことによってリスクを回避します。
分散型金融(DeFi)
DeFiはブロックチェーン上の金融サービスとして提供されるため、法定通貨でそのまま取引することはできず、ステーブルコインが法定通貨に代わって安定した価値をもつものとして使われます。
国際送金
日本円や米ドルを銀行送金で海外に送る際には多大な手数料と時間がかかりますが、ステーブルコインの場合はどこ宛の送金であっても比較的安価かつ素早く送ることができます。
米ドルへのアクセス
特に新興国の人にとってはステーブルコインが銀行を介さずとも自国通貨を米ドルに交換できる手段として役立ちます。
このようにステーブルコインは様々な利便性を備えていますが、テラ事件を受けてステーブルコインが抱えるリスクも顕在化しました。今回はUSTの利用が暗号資産市場に留まっていたため金融市場への影響はほとんどありませんでしたが、一部では暗号資産関連企業の連鎖的な倒産も起きており、ステーブルコイン崩壊による将来的なシステミックリスク(特定の場所で発生した決済不能が広がっていき世の中に混乱を及ぼすリスク)が懸念されています。
こうしたリスクに備えて各国当局はステーブルコインの規制強化に動いています。
米国ではイエレン財務長官が早急にステーブルコイン規制を整備する必要があると発言し、年内を目標に法整備が進められています。発行体には銀行ライセンスと同水準の厳格な規制を敷くべきとの声がある一方で、それでは暗号資産のイノベーションを阻害してしまうとの声もあり、意見は別れています。
日本でも今年6月に担保型ステーブルコインの規制を初めて盛り込んだ改正資金決済法が成立しました。発行体は銀行や資金移動業者、信託会社に限定し、取引の仲介者に対しては登録制を課した上で、十分なAML/CFT対策を求める内容となりました。
欧州その他の国でもステーブルコインのルールが作られようとしています。USTのような無担保型については禁止するべきという厳しい意見もありますが、各国がどのような取り決めをするのかはこれから徐々に明らかになることでしょう。
このような規制の動きは暗号資産市場にとって短期的にネガティブに捉えられるかもしれません。しかし、取引所と同様に適切な規制が整備されることによって中長期的には市場のさらなる発展につながります。