はじめに
自己破産した後にできなくなること
自己破産には、さまざまな誤解がつきものです。「自己破産をするとすべての財産をとられてしまう」「自己破産後は、普通の生活を営むことはできない」と考えている人もいるかもしれません。そのような誤解のために、いたずらに自己破産を避けてしまう人も多いのですが、それらの大半は間違った認識に基づいています。
では、自己破産した後にできなくなることには、どのようなものがあるのでしょうか。
新規のローンや融資が組めなくなる
個人で自己破産をすると、信用情報機関に事故情報が登録されます。いわゆる「ブラックリスト」と呼ばれるものです。各信用情報機関では、借入の申込みや契約などを含む「信用情報」を管理しています。このうち、返済が一定期間滞っていたり、破産開始の決定がなされていたりする場合、事故情報(ブラックリスト)として管理されます。
信用情報は、各種ローンやクレジットカードの申込み、融資、あるいは携帯電話契約の審査などに活用されています。そのため、ブラックリストに載ってしまうと、一定期間、それらの利用が制限されてしまいます。ちなみに、信用情報は複数の信用情報機関で共有されており、代表的なものとしては次のようなものがあります。
・株式会社シー・アイ・シー(CIC)……主に、クレジットカード会社が加盟
・株式会社日本信用情報機構(JICC)……主に、消費者金融が加盟
・全国銀行協会(全国銀行個人信用情報センター・KSC)……銀行や信用金庫、信用保証協会などが加盟
新規の融資やローンが難しいとなると、会社をたたんで新たに事業を行うのは難しいでしょう。もちろん、それほど資金が必要でない事業をすぐに始める人もいますが、追加資金を得たくとも、信用情報を参照している金融機関から新たに借金をすることはできません。申し込んだとしても、与信審査(取引相手の返済能力などの信用度を審査すること)の段階で落ちてしまうからです。
どの信用情報機関に情報が登録されるのかは、契約を結んだ金融機関がどこに加盟しているかによります。CICに加盟していればCICに、JICCに加盟していればJICCに事故情報が載るかたちです。その詳細については、申込書や契約書の約款などに記載されているため、確認しておくといいでしょう。
なお、各金融機関は、いずれかの信用情報機関に加盟していれば、3社の信用情報機関の情報を閲覧できるとされています。そのため、加盟先が異なる金融機関に申込みを行っても、事故情報が閲覧されてしまい、結果的に審査を通過することができません。
ブラックリストの掲載期間は、CICやJICCが5年ほど、KSCは10年程度となります。原則としてその期間は、事故情報として取り扱われるわけです。
具体的な登録内容としては、CICが「破産開始決定と免責の有無」で、免責許可決定を確認した加盟会社が登録した報告日から5年以内は、ブラックリストとして掲載されるとしています。
一方で、JICCには「破産申立ての有無」が登録されます。期間については、契約継続中はもちろん、契約終了後の5年以内となります(2019年10月1日以降の場合)。ちなみに破産申立てが取り下げられた場合は、その取り下げを加盟会社が登録した時点までとなります。
さらにKSCについては、「破産手続開始決定の有無」が登録されます。破産手続開始決定の日から10年を超えない期間については、事故情報として取り扱われます。
各期間が経過した後、事故情報がきちんと削除されているかどうかを確認したい場合は、それぞれの信用情報機関に開示請求を行う必要があります。窓口で申請することもできますが、郵送やオンラインでも可能です。詳しくは、各社のホームページをチェックしてください。
クルマを手放したり資格を制限されたりする
借入れやローンが組めない以外に、破産によってどのようなことができなくなるのでしょうか。
たとえば、破産前に保有していた不動産や自動車は、原則として処分の対象となります。また、次のような職業に関しては、破産手続の期間中は資格制限(資格が使えなくなること)が定められています。
・宅地建物取引士(宅地建物取引業法18条1項2号)、公認会計士(公認会計士法4条4号)、税理士(税理士法4条2号)などの士業
・公証人(公証人法14条2号)
・交通事故相談員(交通安全活動推進センターに関する規則4条1項2号)
・固定資産評価員(地方税法407条1号)
・警備員(警備業法14条1項)
・生命保険募集人(保険業法280条1項4号)