はじめに
所有者責任に問われるリスク
例えば、近隣住民などから「雑草が伸びて害虫が増えているので、除草して欲しい」といった苦情を受ければ、所有者の責任として、定期的な除草作業が必要になります。
除草程度であれば、一回数万円程度と、出費も許容範囲内かもしれません。ただ、所有地にあった木が倒れ、たまたま近くを通りかかった通行人にケガをさせてしまい、その木の管理が不十分だったことが原因だと判断された場合、所有者として賠償責任を負う可能性もあります。そういった不慮の事故に備えた保険は存在しないため、程度によっては、数百万単位、またはそれ以上の賠償責任を負うリスクもあるのです。もし、所有地に崖が含まれている場合は、崖崩れのリスクまで考えると、その責任はさらに大きいものになります。
そのほか、何者かに不法投棄をされたり、空き家に浮浪者が住みついたりといった、防犯上のリスクもはらんでいます。治安の悪化に繫がるほか、それらの対処・対策費用は当然に所有者の責任になるため、こういったトラブルに巻き込まれたときの出費も、大きな痛手になります。
写真(1) 長年放置された雑木林。木が伸びすぎて、倒木の危険が進行している。
家族に迷惑をかけるリスク
過去にほとんど出費もないからと、”人畜無害”な財産として負動産を放置している方もいらっしゃるかもしれません。しかし、ここにも思わぬリスクが潜んでいます。
2022年10月の執筆時点では相続人への登記は義務ではありませんが、2024年からは相続登記が義務化され、罰則規定も加わる予定です。つまり、不動産は、所有者が死亡すると、その相続人に登記(名義変更)しなくてはいけません。
そうすると、相続が起こるたびに、相続登記のための費用負担や、誰が相続するかなど、家族会議のための時間や手間といった、金銭的・心理的な大きなコストが生じるのです。特に後者については、目には見えにくいものの、ときには”要らない不動産を、相続人同士で押しつけ合う”ケースもあり、負動産をきっかけに家族関係が険悪になったという方もいます。
写真(2) 相続による”引継ぎ”がうまくいかないと、空き家の期間が増え、荒廃が進む原因に。