はじめに
有力候補は一長一短
それでは、新議長の候補者たちはどのように評価されているのでしょうか。有力な候補者は3人に絞られたとみられています。現FRB議長のイエレン氏、元財務次官のジョン・テイラー氏(70歳)、FRB理事のジェローム・パウエル氏(64歳)です。
イエレン氏は「ハト派」といわれています。2014年の議長就任以来、景気に配慮しながら少しずつゆっくりと金利の引き上げを進めてきており、その手腕は高く評価されています。トランプ大統領もテレビのインタビューで、「彼女のことは本当に好きだ」と発言しています。
イエレン氏の再任となると、市場は好意的に評価し、株価が上昇する可能性が高いと考えられます。ただ、過去に民主党政権で重用されており、共和党が与党となっている現在の議会の承認が得られないのではないか、と懸念されています。
ジョン・テイラー氏は「タカ派」といわれています。現在はスタンフォード大学の教授で、共和党の支持が比較的得やすいのではないかと考えられています。金融政策は理論に基づいて原則的・機械的に運用するほうがうまくいくという「テイラー・ルール」の提唱者として知られています。
その理論に基づくと、現在1.00~1.25%の政策金利(中央銀行が一般の銀行に融資する際の金利)は本来3~4%まで引き上げるべきと主張しています。もし、こうした考え方を持つテイラー氏が新議長に指名されると、株価は下落し、ドル高・円安に向かうなど、市場は一時的に混乱するかもしれません。
消去法で浮かび上がるのは?
このように、イエレン氏にもテイラー氏にも一長一短があります。そうなると消去法的に、パウエル理事の昇任という選択肢が浮上してきます。パウエル氏は、イエレン氏と同じ「ハト派」といわれており、これまでの金融政策を継続することが予想されるため、市場のサプライズが最も少ないといわれています。
このほかの候補者として、「ハト派」といわれるゲイリー・コーン国家経済会議(NEC)委員長や、「タカ派」といわれるケビン・ウォーシュ元FRB理事の名前も報道されていますが、大方の予想はイエレン氏、テイラー氏、パウエル氏の3氏に集中しつつあるようです。
トランプ大統領は今週中にも新議長を指名する、との観測が強まっています。イエレン氏やパウエル氏が指名されれば、米国でも日本でも株価の上昇傾向が継続する可能性が高いと考えられます。一方、テイラー氏が指名されれば、為替レートがドル高・円安に振れ、日米の株価は一時的に伸び悩むかもしれません。
いずれにしても、FRBの新議長人事は今、最も注目すべきニュースなのです。