はじめに

2022年11月に入って「FTXグループ破綻」というニュースが暗号資産市場を一気に駆け巡りました。日本ではプロ野球選手である大谷翔平選手のスポンサーになっている暗号資産取引所として知っている方もいると思います。米国ではコインベースの次にナスダックへ上場するのではないかと期待されるほど大注目の取引所でした。

そんな世界でも有数の暗号資産取引所が瞬く間に破綻申請するに至り、またしても大きなお金が暗号資産市場から失われました。これを受けて暗号資産に対する悪い印象が強まることが予想されますが、事件の原因を理解することなく、暗号資産だからこその問題だと受けとるのは安易でしょう。

今回は成功者と思われたFTXグループがなぜ倒産したのか、それによって今後の暗号資産市場へどのような影響が及びうるのかについて、できるだけ中立的な目線で解説します。


FTXとアラメダ・リサーチの関係性

FTXグループは、サム・バンクマン・フリード(通称:SBF)という人物が立ち上げた、アラメダ・リサーチという暗号資産トレーディング会社から始まりました。2017年に設立されてからは暗号資産の価格差を利用した裁定取引でおもに稼いでいましたが、事業が拡大するなかで、暗号資産市場のマーケットメイクや投資ファンドも手がけるようになりました。

SBFは2019年にアラメダ・リサーチとは別で暗号資産取引所FTXを立ち上げました。その際に独自の暗号資産としてFTTトークンを発行し、資金調達も実施しました。FTTトークンは、ユーザーが取引所の手数料割引を受けられるなどの用途があり、特に2021年に入ってからはFTXの成長とともに価格を大きく伸ばしました。2022年にはFTXの企業評価額が数兆円規模となり、SBFはForbes億万長者リストにも名前を連ねました。

FTXグループは今年5月に起きたテラショック事件後も、破綻企業の救済に動くなどホワイトナイトのような立ち振る舞いをしながら、事業の堅調さを市場でアピールしていました。

FTXショックは何が起きたのか?

順風満帆にみえたFTXグループですが、コインデスクが今月初旬に出したアラメダ・リサーチのバランスシート情報(2022年6月時点)によって、からっぽともいえる財務状況が明らかになりました。総資産額の大半をFTTトークンが占めており、その他資産もFTXと関わりある暗号資産の割合が大きく、現金同等物は1%未満でした。さらにはFTTトークンを担保にした負債があることもわかり、FTXとアラメダ・リサーチの間で資金融通していた疑いが強まりました。

このリーク情報によってFTXとアラメダ・リサーチの流動性危機に対する懸念が広がり、FTXの取り付け騒ぎに発展するなかでFTTトークンは暴落しました。大手暗号資産取引所バイナンスが救済的な買収を検討すると一時は発表しましたが、その翌日には撤回され、コインデスクの記事からわずか10日間あまりでFTXグループは破綻に追い込まれました。これで騒動はひと段落するかに思われましたが、その直後にはハッキングによってFTXから数百億円もの資産が不正に引き出される事態となりました。

FTXグループ破綻の真相については米国当局を中心に現在も調査中ですが、FTXとアラメダ・リサーチはFTTトークンの価格を釣り上げることによって会計上の評価を不当に良くみせていたといわれています。それによって新しい投資家を呼び込み、そこで得た資金でさらに価格を釣り上げることを繰り返していたとされています。このような自転車操業を続けるにあたって、FTXが顧客資産を流用していたことも報じられています。思い返せばテラショック事件後あるいはもっと前からFTXグループの財務状況は壊滅していたのかもしれません。

FTXグループが破綻申請してからは、SBFがコンプラ部門を無視して自由に資産を動かすことができたなど、社内のガバナンス態勢が崩壊していたことを示す情報が次々と明るみに出ています。今回の事件について、暗号資産ならではの問題がなかったとはいいませんが、その本質はエンロン事件のような、これまでの金融の歴史で繰り返されてきた問題にありそうです。

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