はじめに
過剰飲酒は認知症のリスクを高める
大量に飲酒をする人やアルコール依存症の人は、認知症の発症リスクが高いことがわかっています。一方で少量ないし中等量の飲酒は認知症の原因にはならないのみならず、認知症の予防になる可能性があります。
認知症には、主なものとして、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症の4つがあります。そしてその他にも、さまざまな種類があります。
そのうちの一つが、アルコール性認知症です。飲酒量や日頃のライフスタイルも影響しているアルコール性認知症は、高齢者だけではなく、若い世代にとっても無関係ではありません。
アルコール性認知症はその名の通り、アルコールの大量摂取が原因と考えられる認知症のことを言います。大量に飲酒する人やアルコール依存症の人には、高い割合
で脳萎縮がみられることがわかっていて、認知症になるリスクを高めることにつながります。また糖尿病や脂肪肝、肝硬変、脳卒中等の病気を介して認知症を引き起こすことも考えられます。
一方、少量の飲酒は全く飲まない場合と比べて認知症の発症リスクが低く、日本では国の健康施策「健康日本21」で適切とされている1日のアルコール量は、以下のように定義づけられています(なお、以下のg数は、1日あたりの純アルコール量をあらわします)。
【1日の純アルコール量の適正目安】
・男性: 20 g
・女性:男性の3分の1~2分の1
【1日の純アルコール量の過剰摂取目安】
・男性:40g以上
・女性:20g以上
純アルコール量20g程度の飲酒量の目安は、以下の通りです。
【純アルコール量20gの目安】
・日本酒1合(180ml)
・ビール500ml
・ワイン240ml
・焼酎(25度)110ml
・ワイン180ml
この中でも、赤ワインは認知症の予防効果があると指摘されています。理由は、赤ワインはブドウの皮ごと醸造しているので、皮に含まれるポリフェノールレスベラトロールが脳の老化防止に役立つからです。
私の行っている認知症予防講演会でもこのことを述べていますが、必ず出る質問があります。
「白ワイン好きの人はどうしたらいいですか?」
その場合は白ワインと一緒にブドウの皮をかじれば、赤ワインと効果が一緒になりますのでお試しを。
腸内環境を整えて免疫力をアップ
腸内環境を整え、腸の健康を保つことは、免疫力や睡眠の質の向上、糖尿病・がん・認知症といった疾患の予防にもつながる可能性があると明らかとなってきました。
ヨーグルトや乳酸菌飲料などの発酵食品が免疫力を高めるという話や、なんとなく「善玉菌」が体に良くて「悪玉菌」が体に悪いという話を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。
腸内には免疫細胞だけでなく細菌もたくさん存在しています。個人差はあるものの、約1000種類、100兆個以上もの細菌が腸内に住み着いていると言われ、この腸内細菌の群生がいわゆる腸内フローラです。腸内フローラのバランスが保たれていると、免疫力にも良い影響を及ぼします。
一方で、腸内環境が崩れると、アレルギー症状や自己免疫疾患などが生じることもあります。免疫細胞は骨髄の中で生まれて血液やリンパ液を通って全身を巡っていますが、その免疫細胞の約70%は腸に存在しています。
言うなれば、お腹の中は免疫力を上げる大きな工場です。この工場をパワーアップする力を持っているのが乳酸菌と考えてください。特に、おなじみのヤクルトに含まれているLカゼインシロタ株は、その効果が医学的に証明された乳酸菌の一つです。
日々、乳酸菌やビフィズス菌、発酵食品、食物繊維等の良いものを口に入れ、腸を鍛えトレーニングする「腸トレ」を習慣化することによって、脳も元気にしながら認知症予防をしていただきたいと思います。