はじめに
配当は申告不要の選択で扶養の範囲におさまる
まずは配当について解説します。
(1)申告不要の選択とは
上場株式や証券投資信託(以下、上場株式等)の配当や分配金は、受け取る際にすでに所得税と住民税(合わせて20%)が源泉徴収されています。したがって確定申告する必要はありません。ただし、本人の選択で総合課税や申告分離課税をすることもできます。
総合課税であれ申告分離課税であれ、申告するとその申告した配当などの金額が合計所得金額に含まれます。合計所得金額とは、給与所得や事業所得、不動産所得などの各種所得の合計のことで扶養の対象となるかどうかを判定するための金額です。扶養控除の対象となる扶養親族とは、年間の合計所得金額が48万円以下の、扶養する人と生計を一にする親族のことで、合計所得金額が48万円を超えると扶養から外れます。申告しない限り配当金がたとえ何百万円あったとしても、合計所得金額に含まれませんので、配当金のせいで扶養から外れることはありません。
(2)配当を申告することのメリット
では、配当を申告すると何か得なことがあるのでしょうか?
総合課税による確定申告をすると配当控除の適用を受けられます。配当控除とは配当所得に控除率(10%)を乗じた金額を所得税額から差し引く制度です。
例えば所得税率10%の人が総合課税による申告をした場合、配当所得に係る税額部分については「10%(所得税率) - 10%(配当控除率) = 0%」となり、配当に係る税負担はゼロです。配当受取時の所得税の源泉徴収税率は15%ですので、所得税は全額還付を受けられます。
例えば、大学生の子Aさん(20歳)が投資サークルに所属して株式投資をしていたとします、なお他に収入は無いものとします。
Aさんの年間の株式配当が50万円の場合、10万円(50万円 × 20%)源泉徴収された後の40万円を受け取っています。Aさんが配当控除を受けるために確定申告をすると、源泉徴収された10万円は全額還付されます(計算過程は割愛します)。しかし、申告をすることで、Aさんの合計所得金額は50万円となり、扶養の判定基準の48万円を超えてしまいます。
仮に、Aさんの父の所得税の税率が20%であるとします。20歳の子の扶養控除の額は所得税63万円・住民税45万円ですので、63万円 × 20%(所得税) + 45万円 × 10%(住民税) = 17.1万円となります。Aさんが扶養の対象であったときより、父の所得税と住民税は合わせて17.1万円増加します。つまり、Aさんが申告した結果、Aさんは源泉徴収された税額の全額10万円の還付を受けられますが、父の扶養控除の対象から外れ、父の税額が17.1万円増加してしまいます。
(3)NISA口座は非課税、かつ申告も不要、税制改正でさらに拡大の予定
NISAとは、一定金額の範囲内で投資した金融商品から生ずる配当や売却益が非課税となる口座のことです。それこそ何百万円と利益が出たとしても非課税ですし、もちろん申告も不要ですから、扶養の判定には全く影響しません。ジュニアNISAは令和5年末までは18歳未満でも年間80万円まで投資できますので、投資の勉強に向いているといえるでしょう。ジュニアNISAは令和5年末で廃止されますが、令和5年度税制改正で、つみたて型のNISAや一般型のNISAの合計投資限度枠が上限360万円まで拡大したうえ、非課税期間が無期限となる予定です。法案が通れば、使い勝手が良くなりますので、利用者の拡大が予想されます。
なお、次項で述べますが、通常は、上場株式等の売却損は他の口座の売却益と通算したり、翌年以後3年間繰り越したりすることができます。一方、NISA口座の売却損は切り捨てられ、通算や繰り越しはできませんので、値動きが活発な銘柄は慎重にする方がいいかもしれません。