はじめに
新年を迎え、取引先や目上の方との会食の機会も増えているのではないでしょうか?
そこで、マナーコンサルタント・西出ひろ子( @mannershiroko )氏の著書『知らないと恥をかく 50歳からのマナー』(ワニブックス)より、一部を抜粋・編集して会食のマナーについて解説します。
入店時・着席時の立ち居振る舞い
POINT1 遅刻は厳禁。早すぎるのも失礼
POINT2 自分が先に座ると周囲も座れる
POINT3 取引先と目を合わせつつ乾杯を
長年のビジネス人生において、取引先との会食やパーティーには、何度も参加してきた私たち。しかし、その立ち居振る舞いは、本当に正解だったでしょうか。
50歳以上のベテランだからこそ、取引先や部下後輩たちから「さすが!」と思われる立ち居振る舞いをしたいものですね。
会食やパーティーは、直接の仕事には関係ないから、と気軽な気持ちでいると、思わぬ落とし穴にはまってしまうことも。会食当日もベテランらしく、スマートに対応しましょう。
会食の場でも「5分前に到着」がベスト
会場到着は5分前。早すぎるのも逆に失礼
日本ではことあるごとに、「5分前の行動」といわれます。これはビジネスの会食でも同様です。約束の時間より早めに着席し、ドリンクのオーダーなどを行い、互いに挨拶、乾杯ができる状況にしておくのが理想です。
時間ぴったりに行くと「迷っているのではないか」「何か事故に遭ったのでは」など心配をかける可能性もあります。会食もビジネスの一環ですから、タイムマネジメントは重要です。
とはいえ、到着が早すぎるのも困りもの。先方はお迎え時間の直前まで、慌ただしく準備をしているのですから。10 分も20 分も早く到着してしまったら、セッティングの邪魔をしてしまうだけでなく、先方に気を遣わせてしまうのですから。
やはり5分前に到着するのが、ベストのタイミングといえます。ベテランになったらより一層、取引先への配慮を欠かさないこと。
遅刻はしないほうがいいけれど……
会食もビジネスシーンに含まれる以上、遅刻は厳禁。ただし、どうしても遅れてしまう場合は、早めに連絡を入れましょう。
確実な手段は先方の携帯電話に、直接連絡を入れることです。これなら行き違いもありません。
ただし、先方がセッティングに追われていると、電話に出てくれるとは限りません。このような場合は、メールで連絡を入れます。最近は社会人の大半が、スマホや携帯電話でメールを受信できるようにしています。
さらにはメールも読まれない可能性も考慮して、会場となるお店に電話をして、「本日、18時から●●会社で予約がはいっていると思うのですが……」とまずはそのお店で間違いないか確認をした上で「お手数ですが、●●会社の方に、10分程度遅れそうです、と伝言をお願いできますか」と伝えましょう。これなら確実に、遅れることが伝わります。
店に到着したときに注意するポイント
第一声は、招待されたことに対する感謝
接待の場に訪れて初めて先方にお会いしたときには、招待してくださったことへの感謝と喜びの気持ちを言葉と行動で伝えます。「こんばんは。このたびはお招きくださり、誠にありがとうございます」と挨拶言葉のあとに、お辞儀でその気持ちを一層表現します。
会食の場では常に、招待くださったことに対して、感謝の気持ちを忘れずに振る舞います。接待の場を後にする最後の最後まで、その感謝の気持ちを持ち続けます。別れ際にも「本日は誠にありがとうございました」と伝えることが、洗練された大人のマナーです。
高級店であっても、堂々と振る舞うこと
店先に先方の関係者がいなかったら、お店の受付に「●●時からの▲▲会社の●●さんに招待されている者ですが」と伝えます。
予約時間と社名が一致すれば、スムーズにあなたを座席まで案内してくれるでしょう。高級店などでは、場合によっては、ウエイティングルームなどに案内されて、「少しこちらでお待ちいただけますか」と言われる場合もあります。いずれにせよ、お店の人の指示に従いましょう。
宴席に向かうときは、並び順に注意
席に案内されるときは、お店の人が先頭になり、その次に招待されたあなたが続き、最後に招待した側の関係者の順番になります。
同行者の地位があなたより上だったら、あなたより前を歩いてもらいます。逆にあなたの地位が一番上なら、同行者の前を歩きます。
落ち着きなく辺りを見回したり、足を引きずって歩くのはNG。高級店でもひるむことなく、姿勢良くスマートに歩きましょう。
着席のときに迷わない「席次」のマナー
基本は「先方にすすめられた場所」に座る
会食といえば「席次」が気になりますね。招待された側であっても、こちらがお仕事を請け負っている立場だと、上座に通されることに気がひけるかもしれません。
しかし、あなたは招待された側。勝手に下座に座ることなく、先方の意図を配慮して、すすめられた場所に着席して構いません。先方が上座と下座を勘違いして、あなたを下座に案内した場合も、指摘せずに座りましょう。
席次は「出入り口からもっとも離れた奥の座席が上座。出入り口にもっとも近い手前の座席が下座」とさえ覚えておけば、招待された場で混乱することはないでしょう。
中華料理の席次はやや複雑ですが、招待される側であるのなら、1番目~3番目までの席次を覚えておけば充分です。
「招待された側の年長者」が最初に座る
また自分の部下や同僚なども同席する場合は、あなたが一番に着席します。そうすることで、ほかのメンバーも座ることができるからです。同行者の地位があなたより上だったら、その人が座ってからあなたも座ります。
案内されたのがテーブル席で、お店の人が椅子を引いてくれたら、左側から回り込むように椅子の前に立ちます。お店の人が椅子の位置を戻して、膝の裏に軽く触れたタイミングで腰をゆっくりと下ろしていきます。
左側から椅子に座るのは、ヨーロッパでは昔、騎士たちが体の左側に剣を携行していて、右側から座るとそれが邪魔になっていたためです。その場をスムーズに進めていくことがマナーの本質であり、その所作や形式はそこから成っています。
気持ちよく会食をスタートさせる「乾杯」の流儀
「乾杯」では周囲の人と目を合わせる
全員にお酒などの飲み物が注がれたら、乾杯のためにグラスを持ちます。
ビールグラスの場合は利き手で、グラスの下のほうを持ちます。女性の場合はさらにもう片方の手を、ビールグラスの底に軽く添えるとエレガントです。
先方の簡単な挨拶が終わり、「乾杯」の音頭をとられたら、目の高さまでグラスを上げます。周囲の人と目を合わせて、互いに「乾杯」を伝え合い、一口飲みます。
接待の場合ではほとんどの場合、接待する側が接待される側の上席と次席の人に、順に目を合わせます。接待される側も視線を合わせて、会釈をしてから口にします。
乾杯はグラスを合わせないのが正式だが……
グラス同士をぶつけて音を立てる乾杯は、正式なマナーではありません。グラスに傷をつけたり、割れたりする恐れがあるため、基本的には避けるといわれています。
しかし、乾杯をする相手がグラスを合わせてきたら、同じように合わせるのもマナーです。グラス同士をぶつけないように、あなたがグラスを遠ざけたら、相手の気持ちを無にしてしまいます。
マナーとは相手の立場にたつこと。相手の立場やふるまい、言葉に応じて、相手に合わせた行動を取ることが真のマナーです。
やみくもに形式だけを覚えて、それを実践していれば、認められるというわけではありません。特に年齢を重ねてからは、マナーの本質を理解したいもの。柔軟な立ち居振る舞いをスマートにこなせるのも、50 代以上の私たちだからこそです。