はじめに
ジュニアNISAも改善
2023年をもって新規の投資ができなくなるジュニアNISAにも改善が見られます。本来高校3年生の12月末まで引き出しができず、仮に途中引き出しをすると課税されてしまう点が不評だったジュニアNISAですが、皮肉なことに廃止に伴い2024年以降は払い出し制限が解除されることで、にわかに人気となりました。
例えば0歳の子ども名義でジュニアNISAを始め、中学に進学する際の資金についても非課税で引き出しできるようになったのです。この利便性の拡大が多くの方に支持され、駆け込み投資も増えたと言われています。
ただジュニアNISAの問題点は引き出し制限ではなく、むしろ非課税期間を継続するための手続きにあります。そもそもジュニアNISAの非課税期間は5年間なので、それを超えて資金の引き出しまで引き続き非課税運用を希望する場合、「継続管理勘定」に移管(ロールオーバー)をする必要があります。
しかしジュニアNISAを終了するまで「当然」非課税で運用されるのだろうと思っている方も多く、この継続管理勘定に移管する手続きを知らずに、同じジュニアNISAの勘定にある課税口座に払い出しされたことに不満を持つ方もいました。わざわざ継続管理勘定への移管のために書類を提出しなければいけないという落とし穴は、制度の複雑さの典型例と言えるでしょう。
この問題も、今回の改正案では移管手続きが省略されることになり解消される見通しです。これにより、ジュニアNISAは資金を引き出すまでずっと非課税運用が自動で継続されることになります。
更なる変化も期待
画期的と評価される今回の改正案ですが、実は見送りとなった項目もいくつかあります。例えばジュニアNISAに代わる仕組みとして、統合NISAの口座開設可能年齢を0歳とする案です。資産形成において最も重要なことは時間ですから、子どもの頃から資産形成が可能となれば、大きなメリットに繋がります。またジュニアNISA同様、祖父母からの資金提供も期待されるので、高齢者が持つ「眠れる資金」の活性化が望まれていました。しかし残念ながら、統合NISA口座開設可能年齢は18歳開始にとどまりました。
生涯投資枠の再利用が可能になるのは大きな進歩ですが、これはiDeCoでは当たり前の「スイッチング」と同義ではありません。相変わらずNISAは年間投資枠の中で、投資商品の売買を行うことはできません。特に長期の資産運用においては、投資枠を消費することなくスイッチングを行い、リバランスやアロケーションの変更を行う必要性は高いと考えるため、ここは今後の改正に期待したいところです。
年間の投資枠が合計360万円となり、もはや「少額」投資非課税制度と言えないほど成熟した仕組みに変わってきているのでは、とも感じます。しかし、制度は国民が使ってこそ価値が生まれるわけで、資産形成の裾野が広がらなければ意味がありません。とはいえ、「税金が得するから」と飛びつく必要はなく、人生設計を考える上で適切な資金を適切に投資に振り向けることが不可欠です。
これには金融庁も非常に注意深くなっており、今回の資産所得倍増プランには、金融経済教育の充実と中立的で信頼できるアドバイザーの必要性も明示されています。筆者もこの制度が正しく普及・正しく成長し、皆さんの人生がより豊かになることを願っています。
※編注:本稿は2022年12月25日現在の情報を元に執筆しています。今後、国会での審議が進む中で変更となる可能性があります。