はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は野瀬大樹氏がお答えします。

家賃と投資の2点について相談させてください。

(1)家賃について
今の家賃が高過ぎるのか、妥当なのかがわかりません。将来的にもう少し広い家に住みたいのですが、どのくらいの年収ならいくらまで出せるのか、住宅ローンを借りて家を買った方がいいのか、なにもわからない状態です。アドバイスがほしいです。

(2)投資について
長期投資を始めたいけど、開始していい状況か、また投資してもよい金額がいくらなのかがわかりません。

【現在の状況】
私:27歳、手取25万円程度
妻:25歳、扶養の範囲でパート予定
最近転職を機に上京していますが、想像以上に家賃が高くてびっくりしています。時間もなく、とりあえず賃貸アパートを選びましたが、将来やっていけるのか不安です。
【家計】
家賃11万円・食費3.5万円・貯金4万円・電熱費・通信費2万円・妻の小遣い2万円程度・私の小遣い1万円程度
保険は収入保障保険のみ、年間3万円(補償額月15万円を25年)
ボーナスの半分を貯金、残りでほしいものを買ったり、旅行費や特別な支出にあてたりしています。
【資産】
銀行預金1,300万円のみ
【将来の希望】
子供は2人ほしいです。

マイホームもほしいですが、ある程度いいところを借りれるなら賃貸でも構わないと思っています。現状、家賃11万円の2DKです。子供ができたら大きなところに引越したいですが、まだ土地勘がなく、ファミリー物件なら15万円程かかり、その場合にやっていけないのではないか、それならいっそ家を買った方がいいのではと悩んでいます。

また、仕事が第一だと思いますが、余剰金を長期投資に回して将来の足しにできたらと思っています。インデックス投資による積立と、株価が安いときに長期保有目的での株購入を想定しています。アドバイスをよろしくお願いします。
(20代後半 既婚・子供なし 男性)


野瀬: 私も東京に住んでいた時代がありますが、便利な場所だとワンルームマンションで9万円ぐらいするのでビックリしたのを覚えています。私の実家近辺だと3万円台なんですけどね(笑)。

さて、そんな質問者の家賃ですが、家計に占める比率を考えると少し苦しいですね。私もインドでのビジネスはそんなに順調ではないですが、それでも貯金ができるのはひとえに家賃が安いからです。

今住んでいる家も2ベッドルームで月2万円以下と安く非常に助かっているので、家賃が家計に与えるインパクトは大きいと私は考えています。

“家賃の適正水準は収入の3分の1”は本当?

一方、日本の不動産屋さんはよく「収入の3分の1が家賃の適正水準」だといいます。私はこれには懐疑的でもっと厳しい基準を使うのですが、質問者の場合は、仮にその基準を使っても25万÷3≒8万円となり、基準をオーバーしていることになります。

ですから結論として今の家賃は高いと言わざるを得ません。タイミングを見計らってのお引越しをおすすめします。東京にこだわらず、千葉県や埼玉県になれば家の家賃がガクッと下がります。

たとえば大手町まで一本で出られる行徳や南行徳、池袋にすぐに出られる和光など(電車は死ぬほど混みますが(笑))で築年数にこだわらなければ8万円以内で50平方メートルのものもあります。

ネットで検索して、こういった物件を探すことから始めるとよいでしょう。

もちろん質問者には土地勘がないと思いますので、このあたりに住む職場の同僚などに相談するのがよいと思います。

投資や実需、賃貸や持家に関わらず、不動産選びに土地勘は必須ですので気を付けてください。

家を購入する前に考慮すべきこと

また、家を買うことも検討されているようですが、少しタイミングとしては早いかなと思います。理由は以下の3つです。

一つ目は「家族の数が固まっていない」点です。お子さんの計画はあるようですが、あくまでこれは天からの授かりものですので、家族のメンバー構成については不確定要素が大きいような気がします。

二つ目は「市場が今は加熱している」からです。都市部を中心に不動産価格はかなり上昇しておりますので、あまり「買い時」ではないといえます。

三つ目は繰り返しになりますが「土地勘がない」という点です。賃貸であれば同僚や不動産屋さんに聞くことで土地勘のなさをカバーできますし、仮に失敗したとしても傷は浅いです。

ただ、土地の売買となるとなかなかアドバイスをもらいにくいうえ、取り返しがつかないことが多いので、もう少し土地勘ができてからでもよいと思います。

結論としては以下になります。

(1)より安い賃貸物件に引越しを検討する
(2)そこに住みつつ「土地勘」を養い、相場が落ち着くのを待つ

綱渡りの家計、投資を始めるタイミングを見極めて

正直、お子さんを2人予定されていることを考えると家計的な余裕は多くありません。私もいただいた情報からエクセルでシミュレーションしてみました。

保守的に昇給やボーナスを少な目に見積もったせいかもしれませんが、結果、家計が破たんすることはないですが、前述の家賃の圧縮を図ってもなかなかの綱渡り状態になります。

また老後資金もギリギリの水準である3,000万円を確保するのがやっとの状態になります。

ご年齢にしてはかなり多めの貯金があるので、一気に投資に走るという方法もありますが、今の貯金ペースおよび資金の目的(教育・老後)を考えると、一気にこの虎の子の貯金を投資に振り替えることにも不安を覚えます。

また今はまだ相場が高いですので、その点でも預金から数百万を一気に投資に振り替えるのはリスクが高いように思います。

ですから、ひとまずは月2万円程度の積立投信あたりから始めてみるのはいかがでしょうか?

そして、再び相場がグッと下がったタイミングで、預金から200万~300万円程度を投資信託か株式投資に回すとよいと思います。

このあたりの投資により、老後資金をギリギリのレベルから少し余裕のある水準に引き上げるのが当面の目標になります。

マイホームを購入するなら“賃貸に出せる物件”

純粋な不動産投資はまとまったお金が必要ですので、今の状態を考えるとあまりおすすめできません。

ただ、もし先述のように相場が落ち着いたタイミングで家の購入を考えておられるのであれば、将来的にその家を賃貸に出し「結果的に不動産投資に」という考え方ならアリだと思います。

最悪、借り手がつかなくても自分で住めばよいからです。そのためにも、たとえ実需としての家探しであっても、常に「将来借り手がつくかどうか」を意識して物件を選んでください。

家賃以外の家計に関しては、今のままで非常にスリム化されていると思いますので、今の貯金ペースを続けたまま、まずは大きな固定費である家賃を下げ、そこから投資を始められるようにしてください。

そして1,300万円の預金は、残された数少ないアドバンテージですので、使うタイミングを間違わないようにしてください。

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