はじめに
事例2:倒木が頻発する雑木林
二つめの事例は、倒木が頻発する雑木林です。
この土地は、もともとは寺院の境内だった敷地で、雑木林の維持管理を担うために、その檀家の方が雑木林を買い受け、代々所有してきた土地でした。元境内ということもあり、敷地内には隣接した墓地を通らなければ行き来ができず、車で立ち入ることは物理的にできない立地状況でした。そのため、雑木林の使途も限られ、十分な維持管理も難しいことから、木はどんどん育って高木となり、朽ちた木が強風などで倒れる状況になっていました。
敷地内での倒木のほか、墓地側へ倒れてしまい、墓石を壊してしまうようなケースもあり、「使い道がないのに賠償責任ばかりが膨らんでいく」という、頭の痛い状況が常態化していました。
——トンデモ負動産のその後
立地上の特殊性から、活用が難しいと諦めかけつつ、前に挙げた事例のように、ダメもとで売却活動に取り組んでいたところ、対象地内でシイタケ栽培をしたいという購入検討者が現れ、無事に取引成就となりました。
なお、この雑木林を購入された方は、造園業の経営者で、木のメンテナンスや整備の知識も豊富であったため、倒木などのリスクに対してもプロとして向き合えるということで、お互いに安心して取引できることとなりました。
「トンデモ負動産」は、意外なほど身近にあふれている。
いかがでしたでしょうか。2つの事例ともに、結果的には、安心して土地を活用してくれる人の手に渡ったものの、もともとの所有者の立場になって考えると、「土地との縁を切りたくても切れず、永遠にそのリスクと付き合っていく必要がある」という、想像しただけで怖い財産であることが分かります。
ところで、ここまでお読み頂いた方はおおよそ想像いただけたかもしれませんが、今回ご紹介したようなトンデモ負動産は、決して”対岸の火事”として眺めていられるような珍しい不動産ではなく、身近にあふれています。
不動産は、維持管理をせずに放置期間が長くなるほど、色々なリスクが増え、問題が大きくなりがちです。もし、近隣でこのような土地があったり、自分自身や家族・親族がトンデモ負動産の土地を所有していたりする場合は、早めに関係者で話し合いの機会をもち、適切な維持管理や、責任をもって使ってくれる人に譲渡するなど、積極的な方策を考えていくことが重要なのです。