はじめに

テクニカル分析の現実味を確認する

以上は、主に90日MAかい離率といったテクニカル分析からの判断でした。ただ、これだけではどうも納得できない、やはり日銀の政策転換で日本の金利が上がったら、行き過ぎたとしても円高がさらに広がるのではないか。

そんな「モヤモヤ感」が残った時には、これまで見てきたテクニカル分析の示唆に現実味があるかを確認してみるのが一つの方法でしょう。日本の金利が上がったら、円高になりそう。ただ、日本の金利は、日銀の政策転換にもかかわらず、それほど上がらない可能性があるなら、円高にも自ずと限界があるかもしれない。

日米の金利、10年債利回りといった長期金利を重ねて見ると、2022年3月に日銀が長期金利上昇を抑制する政策を始めるまでは、基本的に連動していました(図表4参照)。ちなみに、ECB(欧州中央銀行)は日銀のような長期金利上昇抑制策をとりませんでしたが、すると独米の10年債利回りは最近にかけて基本的に連動しました(図表5参照)。

このように、日独など先進国の長期金利が、日銀が金利上昇を阻止する政策に動くといったケースを除くと、基本的に連動したのはなぜか。「世界一の経済大国」米国の金利とは、要するに「世界景気」の目安であり、そんな米金利と日独など先進国の金利が連動したのは、グローバリーゼーション時代にあり、先進国の金利は世界景気に反応することが基本となっている、ということではないでしょうか。

こう考えると、日銀が2022年3月に長期金利上昇抑制策を始め、それをなぜ2022年12月に見直したかも分かるような気がします。2022年3月頃から米金利は上昇が加速に向かいました。それと連動したままなら、日本の長期金利も大きく上昇する可能性があったので、金利上昇抑制に動いた。他方で、2022年11月頃から、米景気減速への懸念から米長期金利は低下傾向に向かった。米国および世界景気が減速に向かう中では、その影響を受ける日本の長期金利の上昇も限られそうなので、長期金利上昇抑制策の見直しに動き出した。

いろいろ述べてきましたが、日銀の政策転換でも、日本の金利の上昇が意外に限られるなら、それに連れた円高も限れそうといった、既に見てきたテクニカル分析の示唆とも重なりそうですから、「モヤモヤ感」が後退することになるのではないでしょうか。

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