はじめに

自分の仕事の前後を巻き込み、提供価値の根幹を知る

仕事自体を俯瞰して気づくことがあります。仕事はつながりでできているのです。

企業は組織で成り立っています。皆さんも何かしらの部署に所属していると思います。仕事はひとりでは完結しません。関係者各々の役割があります。役割が連なって顧客に対して価値を提供し、対価を獲得しています。 ここで紹介する企業内越境は、他部門の仕事への興味・関心を持つということです。

まず、自部署を真ん中に据えて、バリューチェーンを考えます。自部署の前後にどんな組織や仕事があり、どのように価値が高まっているのか? どんなコミュニケーションが執り行われているのか? お客様は最終的に何を買ってくれているのか?

そして、自部署とバリューチェーン前後の部署とのつながりに改善の余地がないかを考えてみます。今までのやり方でいいのか? こうつなげると更に価値が高まるのではないか? この工程は省いた方がいいかもしれない。そんな新結合に関する議論を、前後の部署の人たちとしてみてください。自部署という境界を越境し、お客様目線で仕事の流れを見直すと、今まで気づかなかった視点や、考えもしなかったことが手に入ります。

僕は今に至るまでずっと顧客接点を担保しています。つまりは営業です。営業は「業を営む」、つまり事業の根幹です。具体的にはお客様に対してissueraising(課題設定)をして、解決策を提案し、選んでもらい、解決策を実行し、当初の価値を提供して対価を得る、というものです。今は営業して自ら納品することが多いですが、実際の価値提供者が異なることも多かったです。〝売る〞人と〝つくって納める人〞が異なっていた訳です。

もう四半世紀以上前になりますが、営業と制作の部署が一緒になり議論する機会がありました。そのときに、制作の人たちから言われた一言が強烈でした。「井上は売りっ放しだから、ホント困る……」。自分の仕事の捉え方が余りに狭く、お客様に対する提供価値の本質を考えたことがなく、ダメな自分を思い知りました。以降は自分の仕事を部分ではなくつながりで捉えるように心掛けています。

他部門への理解を深め、会社の重層感を味わう

自分の仕事を横に置いて、自社内の他部門や他部署に興味を持ってみましょう。

まず、他部門の同期や、以前一緒に仕事をしていて異動した先輩などを探してみてください。できれば、社内でも注目されている部門がいいと思います。そして、彼らに、普段どのような仕事をしているかを尋ねるのです。聞く内容は次のようなことです。

・自部門と他部門の違いは何か? 
・特に各々の顧客と顧客に提供している価値他部門の強さや注目されている理由は?
・普段から仕事をする際に心掛けていることは?
・仕事でのモチベーションの源泉は?

他部門から聞くことができた話を俯瞰して考え、自部門に参考・導入・援用できそうなことをイメージします。

そして、それらを自分の部署のキーパーソンに話してみてください。社内のいいところは真似しましょう、ということです。なるほど! が沢山手に入るはずです。

1986年に入社して以来10年程度、僕は顧客の新卒採用を支援する部門で営業していました。その間、バブルとバブル崩壊がおきました。インターネット時代の到来による紙メディアの急激な衰退と、資本構成の変更という外部環境の激変も経験しています。

このうち、バブル崩壊は、顧客のニーズを根底から変えました。新卒採用をストップする企業が多発したのです。お客様が採用しないと、当然ですが採用支援の仕事はできません。そこで、虚心坦懐に顧客ニーズを訊いて、採用以外の人材マネジメント、特に人材開発(人材教育)の要望があることを掴みました。そのとき行なったのは、自社のHRD(HumanResourcesDevelopment)部門への越境です。

採用はストップしていましたが、所属社員の育成課題はあったのです。他部門に越境して協働し、採用業務以外の提案を強化したことが、今の自分につながっています。

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