はじめに
金融商品を選ぶ時に知っておきたい「3つの基準」
有野:なるほどなぁ。宝くじって「今年はすごい売れてます!」って、行列がニュースになっても「だから、1等前後賞の当選額がアップします」とか、「本数増えます」とかないもんなぁ。今日の授業で気づいてしまったわ、宝くじに夢見てる人のドリームなジャンボは、半分以下にされてるドリームなジャンボだって。投資もギャンブルだと思ってたから、それなら宝くじとかのほうがさっとできるから、そっちのほうがええわと考えてたもん。
酒井:そうですよね、それに投資するには、いろいろ自分で調べないといけないから大変そうですしね。
有野:そうやねん、だったら手っ取り早く、ドリームなジャンボを、って考えるやん。でも、そのドリームなジャンボは胴元が55%も取ってるという、ドリームな半分ジャンボやねんな。
酒井:もう、ドリームなジャンボって言いたいだけでしょ!
有野:正解。でも投資は知らなさ過ぎて、何から勉強すればいいのかもわからへんもんな……先生、どうしたらいいですか?
塚本:投資を始める前に考えていただきたいのは、「安全性」と「収益性」、そして「流動性」の3つの基準です。
有野:安全性は投資したお金が減らないか、収益性は儲けを期待したいけど元本割れのリスクもありまっせて事ですかね? 芸人のライブだと、安全性は誰にでもちゃんとお見せできるライブですか、出演者は印象悪くされたり損しないですか、ってところかな。収益性はお客さん入って、チケットは完売しますよね、ネット配信もしますか、会社は赤字背負いたくないですよ〜、かな。2つはなんとなくわかりますけど、流動性ってなんですか?
塚本:ここでいう流動性とは、「現金化のしやすさ」です。たとえば、不動産を持っていても、売って現金にするには時間がかかりますよね。一方で、銀行預金だったら、近くのATMやコンビニですぐに現金を引き出せます。収益性は、「どのくらいの利益が期待できるか」、安全性は「元本が減らないかどうか」を表します。
有野:なるほど、芸人のライブで言うと、流動性は転売ヤーがどれだけでるかって事ね、いや、転売アカンがな!
酒井:何ひとりではしゃいでるんですか。先生、銀行預金はほとんど金利がつかないけど、安全性は高いし、すぐに引き出せるのは強みで、流動性が高いですね。でも、収益性が低いか。
塚本:大事なのは、この3つの基準が、すべて二重丸な金融商品はないということです。銘柄にもよりますが、株式投資や投資信託は、基本的には収益性と流動性は高い金融商品ですが、元本を割り込む可能性はあるので、預金や債券と比べると、安全性の面では劣ります。この3つの基準のバランスを考えながら、自分の目的に応じてさまざまな金融商品を選んでいくことが、「資産運用」なんです。
酒井:そっか、全部が二重丸なんて上手い話はないんですね。
有野:先生、ここまでの話を一度整理したいので、続きは次回にしてくれませんか?
酒井:そんなこと言って、実はゲームをやりたいだけじゃないんですか?(笑)
有野:ちゃうねん、株の話が出てきたから、ファミコンの「松本亨の株式必勝学(※)」やって、しっかり予習しとこうと思ってん。
※編注:1988年発売の株式投資シミュレーションゲーム
酒井:ほらぁ、やっぱりゲームじゃないですか(笑)
塚本:そんなゲームがありましたね(笑) では、それでは今回はここまでにしましょう。
有野:よっしゃ、じゃあさっそく、どこに売ってるか帰って検索します!
酒井:持ってないんですか、有野課長!
有野:当たり前やん、課長程度やからな! ちゅうか、ここでは委員長て呼んで。
次回(2月21日配信予定)は「金融商品を選ぶ3つの基準」について聞いていきます。
2時間目:よゐこ有野が嘆く【宝くじ】が当たらない理由「そんなに持ってかれてたんや」
3時間目:よゐこ有野「株主優待を狙おうと…」金融のプロが指摘する問題点とは?
4時間目:よゐこ有野、金融のプロが明かす資産形成のコツにショック「早く始めておけば…」
有野晋哉
1972年2月25日生まれ。大阪府出身。テレビやラジオ、CM、雑誌の連載などマルチに活躍。コンビで公式YouTube「よゐこチャンネル」も開設しており、幅広い世代から支持を得ている。自身が50歳を迎えた2022年に、お金にまつわる知識の大切さに目覚め、日々勉強中。
酒井瞳
1989年5月3日生まれ。宮崎県出身。2008年4月に女性アイドルグループ「アイドリング!!!」に14号として加入し、2015年10月に卒業。その後は地元・宮崎県に関わる活動や、テレビやドラマ、YouTubeなど活動の幅を広げている。2022年2月よりジムでパーソナルトレーナーを開始。また、同年に故郷の宮崎県延岡観光大使に就任。 アイドル専用ジム「iウェルネス」ではトレーナーとしても活動している。
塚本俊太郎
金融教育家、日本CFA協会執行理事。1994年、慶應義塾大学総合政策学部卒、97年に米国シラキュース大学大学院国際関係論修士。同年、UBS信託銀行に入行し、債券運用部ファンドマネジャーを務める。02年以降、メリルリンチ・インベストメント・マネジャーズ(現ブラックロック・ジャパン)、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントなど外資系運用会社にてストラテジストや投資戦略部長などを歴任。20年、金融庁に入庁し、金融教育担当として高校・大学・社会人向けに授業を行う。高校家庭科での金融経済教育指導教材や、小学生向け「うんこお金ドリル」の作成を担当。現在はフリーランスの金融教育家として金融リテラシーや資産形成について発信・寄稿・講演を行う。また、金融教育プログラム構築に関するコンサルティングも実施している。Eテレ「趣味どきっ!」に3月1日(水)21:30から「金育」をテーマに4週に渡り出演。著書『今日から楽しむ“金育” 』(NHK出版)が2月22日(水)発売。
ライター:新井奈央 / 写真:文化工房