はじめに
「高齢者の金融リテラシー調査2019」(フィデリティ投信)によると、約7割の人が退職金の金額を直前まで知らなかった、という驚きの事実があります。今回は退職間際の人が退職金を受け取る前にチェックしておきたい退職金の手取りを増やす方法についてお伝えします。
押さえておきたい!退職金の手取りを増やす2つのポイント
まず、退職金の手取りを増やす重要ポイントは2つあります。「税金を低く抑えること」と「退職金の受け取り方を工夫すること」です。一つずつ解説していきましょう。
●ポイント1:税金を低く抑える
一般的に退職金を一括で受け取る場合、「退職所得控除」という大きな非課税枠が用意されています。これは退職一時金や企業年金、企業型確定拠出年金など異なる退職金制度であっても一括受け取りであれば適用されることを覚えておきましょう。税額を算出する上で必要となる「退職所得」は勤続年数に応じて以下の通り計算を行います。(退職金が特定役員退職手当等、短期退職手当等に該当する場合を除きます)
退職所得=退職所得控除額(※)x 1/2
(※)退職所得控除額
勤続年数20年以下のケース:40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)
勤続年数20年超えのケース:800万円+70万円×(勤続年数-20年)
国税庁:退職金を受け取ったとき(退職所得)から引用
例えば、勤続年数36年の場合、退職所得控除は1,920万円(800万円+70万円×16年)になりますから、受取額が1,920万円までなら非課税となるわけです。仮に、1,920万円を超えたとしても課税となる金額は退職所得控除の超過分の1/2で済みます。さらに、分離課税として給与所得など他の所得とは別に「退職所得」として税額を算出することでも税負担を低く抑えられますし、社会保険料もかかりません。住民税については、所得に関わらず一律10%ほどであることも覚えておきたいところです。
なお、企業型確定拠出年金の退職所得控除を算出する勤続年数については、拠出年数をカウントします。拠出終了後の運用期間はカウント対象外ですから、こちらも注意が必要です。