はじめに
同じ言葉でも、バックグラウンドが違えば異なる意味を持つこともあります。理解してもらえると思っていた発言に、否定的な反応を返されるということもあるかもしれません。
臨床心理学者・平木典子 氏の著書『言いにくいことが言えるようになる伝え方 自分も相手も大切にするアサーション』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)より、一部を抜粋・編集して依頼を断るコミュニケーションについて解説します。
断るときはいきなり「ノー」と言わない
やめてほしいことを伝えるのと同様に、できないことはできないと、誠意をもってきちんと伝えることも大切です。
残業をする時間がないことを伝えた例がありましたが、そんなときの注意点があります。
即座に「できません」「無理です」と突っぱねないこと。
意見を伝えることが大切とは言っても、いきなり「ノー」と言われたら、相手は驚き、立場をないがしろにされたと感じるおそれがあります。また、一方的で、攻撃的にも聞こえます。
互いの立場を守り、大切にするには、いきなり「ノー」と言わず、自分と相手の緊急度を見極めてから、伝えます。「それはできそうもない」ということが明確な場合は、状況や事態を忌憚なく伝え、丁寧に断る試みをしましょう。
もし、その場で判断できない場合は、「考えてみます」と返事をする。そう言われれば、相手は断られたときの心の準備ができ、あとで「できない」と言われても、いきなり「ノー」と言われるよりはるかにショックは少ないでしょう。
「依頼」を「断る」ときは、葛藤が生じます。
それを避けようとして「黙って引き受ける」あるいは「無理です」と突っぱねる。
これは非主張的なやり取りと攻撃的なやり取りの典型と言ってもいいでしょう。