はじめに
無難な就職か、やりたいことを貫くか
次のエピソードは、就職で迷っていたある経済学部の学生の相談から始まりました。
この学生は、幼い頃、漫画が大好きで、漫画家になりたいと親に話していました。
しかし、親に、「何をバカなことを言っている」「おまえが漫画家になれるわけない」「無難な道を選んでおかないと先が危ない」と言われ続け、経済学部に入ったと言います。
それでも、彼は大学に入って再び漫画を描き始め、とある漫画家のもとでアルバイトも始めました。趣味のつもりでやっていたのですが、就職を前にして迷い始めたのです。
アルバイト先の様子を尋ねてみると、
「まあ、今は下働きですからね。でも、ときどき先生(漫画家)から『お前、結構センスあるよ』『その線、なかなかいいじゃん』って言ってはもらえてますが……」と言うので、
「漫画で自分の才能を発揮できそうかどうか、聞いてみたら?」と伝えました。
その結果、「才能がないわけでもないみたいです」となり、彼はアルバイトを卒業まで続け、そこに就職することにしました。
その後、彼は卒業まで地方にいる親には内緒にしていましたが、やりたいことを貫いて現在に至っています。
世間的に見れば、「経済学部を出ながら漫画家?」「親を騙すなんて……」と言われるかもしれません。
ただ、彼は「思い」を抑えることをやめて、やりたいことに自分の資源を使いました。そして、その結果、生きる道を再確認し、なおかつ他人から認められるという達成感を得ています。
こういった例のように、自分の資源を探し出しておけば、それを使うチャンスが見えます。
チャンスとは、向こうから飛び込んでくるものではなく、目の前を通り過ぎていく様々な出来事の中から、自分に合うものをつかみとっていくものです。
経験が浅く自分が見極められていない人、女性や若い人など差別されがちな人たちは、がまんしながら社会に適応していくことを余儀なくされます。自分のやりたいこと、言いたいことをグッと抑えて、目立たぬよう、打たれぬように、密かに待機することもあるでしょう。
そんなときは、自分の資源を、自己研鑽や関心のあること、周囲に役立つことに活用しておきましょう。
早々に自分はダメだとあきらめて、宝を持ち腐れにしたり、堪忍袋の緒が切れて、手ぶらで会社や仕事を辞めたりしないために、密かに待機している間も、転んでもただでは起きないようにすることです。
それは自分の資源を無駄にしない、前向きな生き方と言えるでしょう。